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1話 「腐女子失格」

BL要素もふんだんにありますが、基本は男女の恋愛なので、各要素苦手な方はご注意ください。やばいシーンはないですが、汚い言葉は出てくるのでその点もお気をつけください。

涼平「気がついたか?」

蓮二「あ、アレ?…ここは?」

涼平「俺の家。飲み会で酔いつぶれちまって。ここまで運ぶの大変だったんだぞ。」

蓮二(そっか。おれ、忘年会で上司に無理やり飲まされてそのままよいつぶれちゃったんだっけ。)

蓮二「…すいません。じゃあ俺、悪いんで帰ります。」

(フラァ)

涼平「おいっ」

(バタン!)

蓮二「あ、すいません…。」

涼平「まったく。終電もないし、そんな状態で歩いて帰るってのかよ。今日は泊まってけ。」

蓮二「で、でも。」

涼平「これは上司からの命令だから。俺先シャワー浴びるから、これでも飲んどけ。」

(パシッ)

蓮二「…わかりました。」



・・・よし。今日はここら辺にしておこう。

私、結城亜利沙(ゆうきありさ)は現在高校一年生。まぁまぁ金持ちの家に生まれはしたが、それ以外は平凡な毎日を送る普通のJKである。


そんな私を紹介する上で欠かせないのは、Boys Love、いわゆるBLというやつである。私の生活はこのBLで成り立っており、BLを除いたら逆に何も残らないと言っても過言ではない。

アニメや漫画といった2次元の世界が大好きで、いつでも妄想の世界に意識を飛ばすことができる。まぁ、こういう女子は最近は増えてきているので、そんな特別なことではない。よね?


そして現在、「暗がりの俺と上司」というオリジナル漫画を執筆中である。

自慢ではないが、私は絵がうまい。幼い頃からお絵描きばかりして育ったせいもあるだろう。腐女子は基本的にある一定のレベルまでは絵がうまいというのがあるのだが、私はその中でも頭ひとつ飛び抜けてると思う。

この技術を生かして3年ほど前から漫画を描いている。二次創作もあればオリジナルも描く。ありがたいことに、私の作品を気に入ってくれる人がいるため、その人たちのために作品を制作しては、自作ウェブサイトと無料投稿サイトにアップしている。


「あー、でも最近あんまり進んでないし、濡れ場の前まで描こう。そしたら寝よう。頑張れ、私。」


眠い目をこすりながらまた私は机に向かう。同志たちが画面の向こうで私の作品を待ってる。頑張らなくては。


「…うーん。体から湯気を立たせて出てきた涼平に思わず蓮二は…」



(カァァ)

蓮二「お、俺シャワー浴びてきますっ。風呂借りますね。」

(ダッ)(パシッ)

涼平「おい。」

蓮二「?!……今度はなんですか?」

涼平「なんでそんなに顔赤くしてんだよ。」

蓮二「……お酒飲んだら顔赤くなるに決まってるじゃないですか。変なこと言わないでください。」

涼平「ふーん。あくまでそういう態度とるわけか。わかったよ。」

(バッ)

蓮二「!?っ、ちょっと!」

涼平「いつまでそんなこと言ってられるのかな?」



「フー。疲れた。楽しいところは明日に取っておいてもう寝よう。」


一仕事終えた私はベットに寝転がった。天井には大好きな土方さんのポスターが貼ってあるため、いつも見守られながら眠る。愛するものに囲まれて生きる。最高の生き方だ。このベットでならもう二度と目を覚まさなくても我が生涯に一片の悔いなしだ。




涼平は蓮二に覆いかぶさった。そして蓮二の服を脱がし始めた。

こいつは以前から、なにやら仕事中に暑い目線を送ってくるわ、会議中にテーブルの下で下半身を触ってくるわヤバイと思ってたんだ。やっぱりだよ。どうすりゃいいんだ!?

蓮二は貞操の危機を感じながら、何かないかと今の状況を脱する手がかりを探していた。

そして、涼平の部屋にある水槽の奥に、オタクの部屋のようなものが写って見えた。

水槽の奥に映るそれが何か、どのように役立つのか蓮二にはわからなかった。しかし、それが確実に自分にとって正しい方法なのだとわかった。

蓮二はベットで馬乗りになっていた涼平を組み敷き、自分が上になった。


「積極的な君も嫌いじゃないよ。素直なキミも可愛い。」


なにやら下で言っているが俺は気にせずにその水槽に自分と涼平を映し出した。

その瞬間、水槽が緑色の淡い、しかし、力強い光に包まれた。その光は気づくと自分の体からも発せられていた。


「残念だ!あばよ!また機会があれば相手してやる!」


そう言うと、蓮二の姿は涼平の前から跡形もなく消え去っていた。





亜利沙は部屋の電気がついたと思った。閉じた瞼の奥に光があったからだ。


「誰〜?私はもう寝るの。」


目を開けた瞬間、目の前に見知らぬ男がいた。そして、今にも自分を襲おうと、ベットの上に覆いかぶさっていた。


「キャーーーーー!!」


は?誰だこれ?ふざけんな!誰か助けて!

普段は男が無理やり犯されるところとか描きまくってる亜利沙だったが、自分のこととなると別である。いや、逆に少女の面も残っててよかった。


「うるさっ!静かにしろよ!すぐどくからさ。」


そう言うと男は亜利沙の上からどいた。

なんなんだこいつは。そっちから襲っといてなんだその態度は。


「あんた誰?どうしてこの部屋に入ってこれたの?」


亜利沙は近くにあったGペンの先を、突然現れたこの不審者に向けながら問いかけた。


「それで指すのか。おーこわい。」


男はベルトを外し、チャックも降ろしていたズボンをちゃんと履き直していた。襲う気はなくなったようだが、以前ふざけた態度の男に、亜利沙はイラついた。


顔が少しいいからって調子に乗りやがって。こいつは少し痛い目を見たほうがいいな。


亜利沙はペンを男の足に突き刺すふりをしようとした。

しかし、向こうを向いていたはずの男は後ろに目が付いているかのように亜利沙の攻撃を避け、亜利沙の力を利用して力を受け流した。


「そっちがその気なら手加減はするつもりないよ。」


はぁ?そっちが先に仕掛けてきたんでしょ?!

そんなことを言う暇もなく、亜利沙は机の上に倒れこんだ。その時、先ほどまで描いていた「暗がりの俺と上司」に持っていたGペンの線を描いてしまった。


あー!せっかく書いていたやつなのに!まじできたねーおっさんに犯されちまえこいつ!


文句を一言いおうと振り返った時、さっきの男は腹部のあたりを押さえて倒れ込んでいた。


「くっ。は、腹が…。」

「えっ。まさか本当に当たっちゃった?だ、大丈夫?今救急車を…。」


このままでは Gペンで人を刺した傷害罪とか訳のわからない前科がついてしまう。

亜利沙が男に近づくと、男の腹から液体が流れ出ていた。はじめは血だと思った。しかし、それは血ではないとすぐにわかった。色が黒かったのだ。恐ろしいことに、男は腹から黒い液体を流していた。


「く、黒い。なんで。」

「ま、漫画を…。」


そう言うと男は意識を失った。私は線が入ってしまった漫画をみた。その線はちょうど九条蓮二(くじょうれんじ)というキャラクターの腹の辺りを通過していた。


まさか。


私は急いでその線を修正液で直して、九条蓮二を描きなおした。その行動が、意識を失ったけが人の前ですることではないとわかってはいた。しかし、それをすることで全てが解決するような、そんな気がしていた。


「ふぅー。助かった。」


直すと同時に、背後で男の声が聞こえた。

何がどうなっているというのだ。漫画のキャラクターに線を書くと、この男が書かれたのと同じ場所を痛がり、漫画のキャラクターを書き直すと、この男も治る。これは…


「あなたは…2次元の世界から来たっていうこと…?」


男はさっきまで痛がっていたのが嘘のようにケロっとして私の描いた漫画を手に取っていた。


「うーん、そうみたいだな。これが俺の出ている漫画か。ということは、お前が俺の世界を作った作家か。」

「そうみたいだなって、私は信じられない!自分の描いた漫画のキャラクターが現実に現れるなんて…。」


ああ。連日妄想の世界に意識を飛ばしすぎたせいで、ついにこんな幻覚まで見るようになってしまった。もう末期なのかもしれない。でもどうせなら、男がやってくるんじゃなくて私の周りの男同士がみんな恋に落ちればよかったのに。


「明日は精神科を予約しないと。いや、これは夢。そう夢だ。私は今夢を見ているんだ。目が覚めた時私はまだ16歳。起きたらプリキュアをみて朝ごはんを食べて、涼しいところで漫画の続きを描くのだ。寝て起きれば元どうりのはず。そうだそうだ。」

「ああ、とりあえずそういうことにして今日は遅いし寝よう。俺この椅子で寝るから。おやすみ。」


こいつは私の妄想のくせに全然タイプじゃないし。全部勝手だしなんなんだ。

亜利沙はベットに横たわっていつものように妄想を始めた。妄想をしながら眠りにつくのが一番の楽しい時間だった。

どうせ一夜を共に過ごすなら童顔で可愛い男子に「おねーちゃん」と呼ばれたい。そしたら、楽しいことを教え込んであげるのだ。それで、味を覚えた可愛い少年はその一夜のことを忘れられずに


「おい。」

「っなんだよ!人がせっかく妄想の世界に浸っていたというのに。」

「名前。なんていうの?一夜を過ごすのに名前も知らないんじゃさすがに失礼だろ。」

「はぁ?変な言い方すんな、変態!……はぁ。亜利沙だよ。」

「おやすみ。亜利沙。」


なんか暗がりの中でおでこにキスをされた気がする。

けどもういいのだ。これは妄想、私の夢。はぁ、いつからこんな頭メルヘンの夢女子になってしまったんだ。暗がりで男と男が組んず解れつのはずが、自分との妄想をしてしまうなんて。

腐女子としての自分に反省していると、私はいつの間にか眠りについていた。

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