スライムが倒せない
勇者歴という言葉があるなら、俺はそれを誰よりも自信を持って答えるだろう。
元、日本の高校生であった俺は、部活の帰りに足元に出現した魔法陣によって、異世界に召喚された。
そこで王様に邪神を倒して欲しいとお願いされた訳だが、勇者として召喚された俺には最強の魔力と身体能力が備わっていた
快く承諾すると、俺は各地にある伝説の装備を集めながら経験値を稼ぎ、五年掛けて邪神に戦いを挑んだ。
悪戦苦闘しながらも何とか邪神を葬り、役目を終えた俺は王様にそれを報告し、そのまま旅に出た。
しかし旅を始めて三年、俺は再び別の異世界に勇者として召喚されたのだ。
今度は魔王を倒すらしいが、前の世界での能力と装備、更に再び召喚されての能力の上乗せは、俺をチートにさせた。
正直言って、魔王と何だろうと敵じゃないのは明らかである。
調子に乗った俺は王様や姫様に、自分の力を見せ付けようと、王国の外にいる魔物と呼ばれるモンスターに会いに行った。
それが事件の始まりだった。
「勇者様!彼処にスライムが!」
「先ずは軽く腕試しじゃぞ!」
「これが・・・スライム?
人類の敵、だと?」
姫様と王様が後ろで何か騒いでいるが、そんなことはどうでもいい。
「このスライム・・・めっちゃプリティイィィィイイイ!!?」
クリッとしたつぶらな瞳と宝石のような輝き、聖水のような透き通った体と歪じゃない理想的なそのシュルエット
「ボク、悪いスライムじゃないよ?」と、可愛らしい幼い声が幻聴で聞こえる。
結論から言おう。
俺はスライムを倒せない。
可愛いものが大好きな俺には、この子を抱き締めることしか出来ない!
王様の話しでは、他の魔物もこんな感じらしい。
つまり、
可愛い魔物たちを愛でるために、俺は旅に出た。
「待っててね!魔王ちゃん!!」