4話 特訓とかさせられて
ルーレンと出会って、翌日
ハルトはまたルーレンのところへ訪ねてきた
「おや、結局ローブ着て来たのかい?」
ルーレンがハルトの格好を見て言う
ハルトの服装は、ルーレンからもらった呪術師のローブを着ていた
「あのマント、サイズが合わないから仕方なくだから」
「そうかい。それで、今日は何の用かな?」
「あの白紙の本って元に戻せない?」
「…うーん、できるとは思うからやってみるよ。早速だけど本を渡してくれるかな」
ハルトがうなずき、ローブの下から本を取り出す
それをルーレンが受け取り、本に視線を向けて集中する
すると、本に光が覆われていく。しばらくすると、拾った時と同じように表紙に雷の絵が描かれた状態になる
「元に戻った…」
本の様子を見て思わずつぶやくハルト
「初めてしてみたけど、うまくいったようだね。これからは魔導書が白紙になったら直してあげるよ」
「ありがと」
修復してもらった魔導書を受け取り、そのまましまうハルト
「今日はこの後何かあるのかい?」
ルーレンがハルトに質問する
「しばらくは何もすることないんだよねー…。帰る手掛かりがないからどうすればいいかわからないし、町の中じゃあんまり目立ったこともできないし。
グレンが酒場で何か情報仕入れ次第ね」
「そうか」
話しているところでグレンが図書館に入ってくる
「ハルトー、いるかー?」
「あ、グレン。何かあった?」
「ああ、宝箱がある遺跡のことを聞いたんだけどお前も来るか?」
「へぇ、なかなか面白そうじゃん。行く行く」
「魔物が出てくるかもしれないけど大丈夫なのか?」
ルーレンが話に入る
「魔物…?」
魔物が何の事かわからず復唱するハルト
「お前も一度戦ったことあるだろ。ほら、あのスライムとか犬とか、ああいう人を襲ったりする凶暴なの生き物のことだな」
グレンが魔物について説明する
「ああ、あいつらね…。それなら魔導書があれば何とかなるでしょ」
「でもお前、魔導書の魔力がなくなって危ない目にあってたじゃないか」
「魔導書たくさん持ち込んでれば何とかなるし…」
「どこで手に入れるんだよ、その魔導書…」
「あー、えっと、本屋で…?」
「…金は?」
「そこは、ほら、グレンが…」
「服買ったので、もうそんなに残ってないぞ」
「じゃ、じゃあ…えっと」
グレンとハルトのやり取りを見てルーレンが提案する
「ハルトは魔導書が必要なんだよね。それならここのを使うといいよ」
「え、いいの…?」
「いいよ。ここのは大体読んでてもう使わないから。
魔法は本来、使用者の魔力を消費して発動するから、やり方さえ覚えてしまえばあとは本は必要ないし」
「…どうせこっちのやり方は間違ったやり方だよ」
「そういう意味で言ったんじゃないから…。」
「魔導書の方はそれで解決でいいか?」
グレンが間に入る
「うん、そうだね」
「思ったんだが、本を大量に持たなくても魔力切れを気にしないで戦えるように武器でも持ったらどうだ?」
「…武器?」
「ああ、剣でも何でもいいから武器を持てば、それだけで十分戦えるだろ」
「あー、確かに」
「一応何かしら持っておいた方がいいと、俺は思うんだが…」
「確かにね。片手で持てるようなのなら、魔導書持ちながら使えると思うんだけど、そんなのどこかにないかな…」
「武器屋にでも行って、探してみるよ」
「あれ、でもさっき金はそんなに残ってないとか言ってたような」
「高いのは変えないけど、剣一本ぐらいならたぶん買えれるよ」
「なら、いいんだけど」
「でも、いきなり武器とか持ってもちゃんと使えるのかな。」
ルーレンが指摘する
「言われてみれば…でも、こんな町中で武器を使う練習とかできそうに思えないんだけど…」
「…できなくはないかも」
ルーレンがポツリとつぶやく
「何かあるのか?」
グレンがルーレンに尋ねる
「時間があれば準備できると思う。明日、また来てくれないかい?」
「何かあるみたいだし、そっちに任せる。この際だし武器見に行こ、グレン」
「ああ」
ハルトとグレンは、図書館を後にして武器屋に向かった
武器屋は煙突が立っている少し小さな建物で、煙突から煙を吹きだしていた
「煙出てるとかここで作ったりしてるのかな」
その建物の様子を見てハルトはつぶやく
「ああ、ここの武器屋はガレードっていう俺と同じ竜人で自分で武器を作って、売っているんだ」
「一人で全部やってんだ…」
「そのせいでたまに、材料集めとかで店が休みな時があるな」
「ふーん。とりあえず中入ってみよ」
「そうだな」
二人で武器屋の中に入る
「いらっしゃい!今日は何探してるんだ?」
入ると大きな声が店内に響く
中はあまり広くはないが、様々な武器が壁にかかっていたり、置かれていた
そして奥には木でできたカウンターとそこに構えている緑の竜人がいる
「元気そうだな、ガレード」
「お、グレンか!今日はどうしたんだ?」
「こいつの武器を探していてな」
「面白い格好した奴だな。お前、名前は?」
「あ、えっと、陽人。吉野陽人」
「ハルトか!俺はガレードだ、よろしくな!それで、どんな武器がいいんだ?」
「えっと、剣探してるんだけど…片手で持てるような」
勢いに押されつつ、武器を注文する
「剣か!それならこれならどうだ?」
そう言って、刃は細く、大きさは小さいながらも銀色で美しい剣を取り出す
「うわー…高そうな剣」
その剣を見てそんな感想を漏らすハルト
「確かに付けてるねは高いがグレンの知り合いなら安くしといてやるよ」
「…いいの?」
「いいって、いいって!グレンの知り合いなら安くしといてやるよ。こいつ、いつもうちで買ってくれてる常連だしな」
「それで、いくらになるんだ?」
「それじゃ、750でどうだ?」
「一応聞くけど、原価いくらだ?」
「2000だけど?」
「…安くしすぎだろ」
「そんなこと気にすんなよ。売れたらそれでいいんだしよ」
「だからって半額より安くするのはどうかと思うぞ」
「大丈夫だ。これ売れ残りだし」
「それでいいのか…」
「手入れはちゃんとしてるから品質は保証するぞ!」
「…そうか、せっかくだし買わせてもらう」
グレンが代金を支払い、剣と鞘を受け取る
「聞いていて大丈夫なのかって、思ってきたんだけど…」
「それでもこいつの作る武器は、中々のものだぞ」
「ならいいんだけどー…」
「俺が作った剣、使ってくれよな!」
「存分に使わせてもらうから」
ガレードに別れの挨拶をした後、家に戻った
「さっき買った剣、綺麗だよねー…」
そう言って鞘から抜いて、手に持ってみるハルト
「そうだな。中々様になってるぞ」
「そう?気に入ったし、ちゃんと使えるようにしておきたいなーなんて思ってる」
鞘にしまいながら言葉を返す
「明日、ルーレンが何とかしてくれるらしいし訪ねてみようか」
「そうだね」
そして、その日はそのまま終わった
翌日
「それじゃルーレンのところ行こう」
「ああ、そうだな」
ハルトは外に出る前にローブを身に着けてからグレンと出かけた
図書館の中に入ると本棚の配置が換わっていた
「あれ、何かあったの…?」
「ああ、ハルト達か。大したことじゃないよ。
早速で悪いんだけれどハルト、ちょっと中央の方へ行って立ってくれるかな?」
「いきなり何?まぁ、いいけど…」
ルーレンの指示に従って言われた場所に移動する
「それじゃ、始めるか」
ルーレンがそういった後、何か魔法を使う。すると、本棚が音を立てながら動き出し、本棚の配置がハルトを囲む形になる
「え!?ちょっと、ルーレン!これどういうことなの!!」
「落ち着いて、今から練習相手を出すから」
そう言って、更に魔法を使う。すると、ハルトの前方に魔方陣がいくつも出現し、そこから犬のような姿をした魔物が出現する
「魔物!?…ああ、なるほど。ここで戦って練習するってわけね」
「そう言うことだよ」
そう言いながら外側に置いてあった、高い所にある本を取るために用意されていた梯子を使って本棚の上にルーレンが立つ
「それじゃ、さっそく特訓させてもらおうかな」
そう言って剣を抜くハルト
「おっと、忘れていた」
ルーレンが慌てて魔法を使う。囲まれている本棚が障壁に覆われる
「戦ってる中で壊されちゃ困るからね。後は…」
上からハルトへ魔導書を二冊投げ込む
「…これは?」
「今持っている魔導書以外も使うのに慣れた方がいいだろう。今投げたのは、風の魔導書と水の魔導書だ。
使ってみてくれ」
投げ込まれた魔導書を拾って、風の魔導書を左手に持って、水はローブの中にしまう
そして、右手に剣を構える
「ありがと!とりあえずやってみるか!」
そのまま犬の大群に向かって駆け出す