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Fly Away  作者: 館波実笠
1/6

第1話

ファンタジー、というよりかはノージャンルものですかね……「WILDCAT」に比べれば恐ろしく短くなりますが、短編としてお楽しみください。

広がる青空。

誰もが夢見る、その先の世界。

ただ、恐れもする。

だから私は求めた。

その先へと飛翔ぶことを。

さまざまな呪縛から解き放たれて飛翔ぶことを。

 

 

 Fly Away 〜over the sky〜

 

 

 この世界の人は魔法が遣えるにも関わらず、空を飛ぶことを恐れた。

 青い空へ飛ぶことを恐れた。

 何が人をそうさせるかはわからない。一説には空に住まう悪魔のためとされているが、そんなものを証明する者なんていない。だからなぜ恐れるかは、私にとって謎だった。

 だから、私――ゼフィルス・ジェンクスが生まれたときからこの世界に空を飛ぶモノは存在しなかった。

 

 小さな町工場がゼフィルスの家だ。

 インターポス・ストリング国。その王城の城下町として彼女の住まう町は広がっている。王城の城門から続く大通がその町の中央に横たわるようにして通っており、道の左右には商店などが続いている。ほとんどが四、五階建ての建物で二階部分から上はアパートメントとなっていた。

 そんな町の一角にゼフィルスの家がある。よく言えば鉄鋼業……簡単に言ってしまえば鉄板を作ることを主としている工場だ。ここで作られた鉄板は、家具はもちろんのこと、武器などにも使われているという。

 ただそんなこと、彼女には関係なかった。彼女は別に普通に誰かのために仕事をする気などさらさらなかったのだから。

 ゼフィルスには野望がある。それは空を飛ぶことだ。誰もが恐れてやったことのないであろう、空を飛ぶこと。生まれたときからと言っても過言でないほど彼女の空への憧れというものは強かった。

 ただひとえに空を飛びたい。自由にして自在なる世界を飛んでみたい。そういう想いでいっぱいだったのだ。

 空を飛ぶという夢。

 しかし現実というものになることが難しいから夢というのである。

 国の法律で空を飛ぶことは禁止されているのだ。もともと恐れて行こうとしない場所をさらに国が行くことを禁止しているという現実。それがゼフィルスにとっては一番の問題だった。

 

 カーンカーンと乾いた音が小気味よく響く。

溶かした鉄を型に入れ、さらにそれを冷やし、次に形を整えるため叩く。それがジェンクスカンパニーの簡単な仕事内容である。もちろん形成などもやるが、最近ではそれ専門の職ができてしまったため、ほとんど形成の仕事は行っていない。

「ふう……アツ……」

 額に浮かび上がった汗粒を首に巻いてあったタオルで拭う。ぺたりと額に髪が張りついた。 ポニーテールにしているにも関わらず腰の辺りまで伸びている髪は、透き通るようなアッシュブロンド。同じ色の瞳が真剣に目の前の微妙に歪曲した鉄板を睨んでいた。

「もう少し……かな」

 手にとって目と同じ高さに持ってくる。曲線を描いたそれにはいくつかの穴が均等な感覚で穿たれていた。

「ゼフィー、またやっておるのか?」

 そんな彼女の後ろからしわがれた声がかけられる。ゼフィルスが振り返るとそこには彼女と同じ色――よりも少し色あせた髪をした老人が立っていた。彼女の祖父であり、工場の創設者であるウィンド・ジェンクスだ。

「おじいちゃん……」

「ふん。たまに工場にいると思えば、またくだらないものを作っているわけか」

 ウィンドの鋭い目がゼフィルスに向けられた。憤然としているような、それでいて呆れているような感情がこもっているように見える。

「くだらないって何よ……お父さんの夢を馬鹿にするの?」

 ゼフィルスが負けじと言い返す。

 そう。彼女の夢――それは彼女の父親の夢でもあった。

「馬鹿以外の何だと言うのじゃよ、空を飛ぶなんぞということが。まったくもってくだらない。そんなことをしているようだったらちゃんと仕事を手伝え」

「嫌よ。私は絶対に空を飛ぶ。それをここで作ってみせる」

「くだらないな。お前の父親も同じことを言っていたよ。まったく、そんなことを言い出さなければ、あんなことにはならなかったというのにな」

 ただそれだけ言うとウィンドは踵を返す。その後姿をゼフィルスはただただ見詰めるだけだった。唇を噛んで。


次回もよろしくお願いします〜(^o^)

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