第六十三通 張り裂けそうな思い
安奈の突然の訪問から、三日が経つ。結局あの日は家で話をしただけだ。だから、今日は外で会う約束をした。そのため、今日は駅前まで来ている。待ち合わせと言う訳だ。
なぜ、駅前かと言うと、初めて待ち合わせしたのが駅前だったので、取り合えず駅前で待ち合わせになった。
しかし、今日も人が沢山いる。大抵の人が待ち合わせをしているらしい。こうも人が多いいと、安奈を探すのも一苦労だ。
「おっ、安奈。コッチコッチ」
安奈を見つけ、僕は手を振りながら叫ぶ。安奈も僕に気付き微笑みながら駆け寄る。
「ごめん。ちょっと、遅くなっちゃった」
「気にしてないよ。僕の方が早く着ただけだから」
「今度からは私が、早く来るから」
「別に、勝負じゃないんだから……」
何やら張り切る安奈に、僕は笑いながらそう言う。その後、僕と安奈は繁華街を見て回った。色んなお店を見て周り、楽しく時を過ごしていく。流石に人が賑わっているだけあって、道に迷ったりもしながら、目的の公園にやってきていた。
「結構、遠かったね」
安奈はそう言って僕の方を見て微笑む。その微笑みは僕の心を、優しく癒してくれる。
「桜見られるといいね」
安奈はそう言って公園の中を見回す。そう、僕と安奈は今日この公園に桜を見に来たのだ。健介からの情報で、この公園で桜が見られるとの事だったが、何で健介がそんな事を知っているんだろう。少し疑問が残るが、そんな細かい事は気にしない様にした。
「さぁ、行こうか。確か奥の方で桜が咲いてるって」
「でも、健介君何処から、そんな情報手に入れたのかな?」
「何処からだろう? 僕も気になってたんだよね」
「まぁ、細かい事気にしてもしょうがないよね。さぁ、行こう」
安奈はそう言って微笑みながら駆け出した。ため息を吐きつつも、僕の顔は自然と綻び前を走る安奈を追いかけた。
「ちょっと! 待ってよ」
走りながら安奈にそう叫ぶ。そんな僕に、安奈は振り返り可愛らしく微笑み、大声で叫ぶ。
「早くしないと、置いてくよ」
「だ、だから、ちょっと待ってって……」
そんな僕の言葉は届かなかったのか、安奈は僕に背を向け駆け出す。その背中はドンドン遠ざかる。僕は足を止めその背中を見ていると、急に胸が張り裂けそうなほどの痛みを感じ、苦しくなる。このままだと、安奈との距離が遠ざかってしまいもう二度と会うことが出来ない気がした。