第五十八通 変な女子高生
何事も無く、学校が終った。健介は最後までチョコが貰えず、かなり落ち込んでいたが、きっと部活が終わった後に由梨絵から、貰えるのだろうが、きっと塩と砂糖の量を間違えてると思う。
和彦は最後まで女子に追い回されていたが、結局どうなったのかは分からない。
一人寂しく帰路に着く。冷たい風が僕の頬を通り過ぎ、口から吐き出される息は白く染まっている。足元に気をつけながら、そそくさと歩いていると、目の前を歩いていた女子生徒が滑って転んだ。
僕は俯いて歩いていたため、その事に全く気付かず、そのまま通り過ぎたが、すぐに後ろから呼び止められた。
「コラ! 女の子が転んでるのに、普通にスルーするな!」
始めは僕じゃないと思い、振り向かずにトボトボと歩いていたが、更に次なる言葉が飛んで来る。
「って、無視するな!」
未だに自分の事だと思わず、俯きながら歩いていると、背後から何やら足音が聞こえる。僕はぶつかると危ないと思い、端によって道を譲った。
「エッ! 何で避けるのよ!」
女子生徒の声が真横で響き、何かが僕の顔の横を通過し、女子生徒がまた滑って転んだ。流石の僕も、これには気付かざるえなかった。
「イテテテッ……」
ミニスカートを右手で押えながら、左手でお尻を摩っている女子生徒。どうしたらいいか分からず、僕はとり合えず右手を差し出して言う。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけ無いでしょ!」
少し怒りの篭った声で、女子生徒は僕の手を取り立ち上がる。制服からすると、この辺の高校の制服ではない。あんまり、関わり合いたくなかったので、すぐにその場を去ろうとしたがそれは、不可能だった。
「ちょっと、何処行くつもり?」
「どこって、帰るんですけど……」
「こんな可愛い女子高生を、一人置き去りにしてか?」
自分で可愛いというか。全く変なのに絡まれてしまったと、後悔する僕を彼女は睨みつけてくる。
「何? まさか、変なのに絡まれたと思ってるんか?」
まさに、その通りだ。だが、流石に初めて会った人に、そんな事言えずにとり合えず微笑みながら口を開いた。
「まさか……」
「本当か? なら、案内してくれんか?」
「どこにですか?」
「ここ」
彼女は手に持っている紙切れを僕に渡した。それには、駅から僕の通う高校までの地図らしき物が描いてある。所々省略されているが、何となく分かる。なぜ、僕の通う高校に行きたいかは、分からないがとり合えず案内する事にした。