第五十七通 チョコが貰えない訳?
バレンタイン当日。
チョコを貰える訳も無く、午前中の授業が過ぎた。和彦は朝から女の子に囲まれ、沢山のチョコを手渡されていた。流石は、人気ナンバー1の和彦だ。だが、本人はあんまり嬉しくは無いらしい。
「ふ〜っ。ようやく、一息つける」
人気の無い屋上に僕と和彦はいる。流石に、ここには女子の目も届かず、とても静かだ。校庭からは和彦を探す女子達の声が聞こえる。
「まだ探してるよ……」
ため息を吐きながら和彦はそう言う。流石の和彦も、この日だけは苦手らしい。と、その時、屋上の扉が開き一人の男が入ってくる。とても機嫌が悪そうな顔で、僕と和彦を見る。そして、大声で言う。
「ああーっ! 和彦が……」
「やめろ! 馬鹿!」
和彦は男の口を押さえる。そう、男とは健介の事だ。ついでに機嫌が悪いのは、未だにチョコを貰えていないからだ。
暫く暴れていた健介も、ようやく落ち着きを取り戻した。
「あ〜っ。なぜ、チョコが貰えん」
「日頃の行いが悪いからじゃ……」
そこまで言った時に、健介の鋭い視線に気付き言葉を呑み、笑いながらその場を誤魔化す。自分でもびっくりだが、今では健介と普通に話が出来るようになっている。
「それじゃあ。お前も日頃の行いが悪いのか?」
「いや。ユキの場合は存在感が無さ過ぎるんじゃないか?」
「そうか? 根暗だからじゃないか?」
「う〜ん。それもありそうだな」
2人は言いたい放題に言いまくる。激流の様に流れ出る二人の言葉が、僕の心を激しく貫く。まぁ、悪気は無いのだろうが、メチャメチャ凹む。
「あ……あのさ……」
ゆっくり口を開いた僕に、健介と和彦が同時に答える。
「どうかしたか?」
少々間を空けて僕は口を開く。
「2人とも、僕に恨みでもある?」
「恨みなんて無いさ。なぁ」
健介はそう言って和彦の顔を見る。和彦は縦に首を振りながら言う。
「そうだよ。何でチョコが貰えないか、話してただけだよ」
「それならいいけど……。何か、僕に対する不満を言い合ってるだけにしか聞こえなかったから」
僕がそう言うと、2人は笑いながら顔を見合わせる。なんだか、無理やり笑っている様に見えるが、まぁそこは深く追求しない様にしよう。
その後も何気ない話をしながら、昼休みは終っていった。
更新が大分遅れてしまいました。
ご愛読してくださる皆さん。どうもすみませんでした。
スランプの方は、未だに乗り越えられず、また更新が遅れるかも知れませんが、何とかスランプを乗り越えられるようにがんばります。