第五十六通 淡い期待
明日は、バレンタインデーと言う事で、教室では男女共に何やらざわめいている。健介もその一人だ。
「明日は、バレンタインだぜ」
少し興奮気味で嬉しそうに健介はそう言う。やっぱり、チョコが一杯もらえる方が嬉しいんだろうが、僕には別に興味の無い事だ。どうせ、貰える見込みもないし、全く期待はしていない。
「なぁ、マサ。勝負しないか?」
「勝負?」
「ああ、チョコ幾つ貰えるか」
全くもって興味は無い。チョコが幾つ貰え様が貰え無かろうが、結局好きな人から貰えなきゃ意味がないのだから。まぁ、健介は確実に由梨絵からチョコを貰えるだろう。僕は――多分、無理かな。
「なぁ、どうする? 勝負するか?」
「僕とするより、和彦と勝負した方がいいんじゃない?」
僕が笑いながらそう言うと、健介は両手で机を激しく叩き立ち上がり、僕を指差しながら大声で言う。
「馬鹿か! 和彦と勝負したら俺が惨敗するのが目に見えてるだろ!」
「いや。だからって、僕と勝負したら健介が勝つのが、目に見えてるよ」
僕は呆れながらそう言う。しかし、それに対して健介は強気に答える。
「何を言うか。だからこそ、勝負するんじゃないか。ワハハハハッ!」
大声で笑う健介に、流石に言葉を失い笑うしか出来なかった。
学校が終わり家に帰ると、安奈からのメールが届いているのに気付いた。僕は制服を着替えながらそのメールを見た。
『今日はサッカー部の練習がお休みです♪ 久しぶりに部活が休みで、何だかゆっくり出来そう。そう言えば、明日はバレンタインデーだから、チョコを手作りしようと思うんだけど、どうやったら美味しいのできるかな?』
このメールを見て、少し肩を落としため息を吐いた。僕にチョコをどうしたら美味しくなるかと、訊くと言う事は僕に手作りチョコを渡す気はないと、言う事になるのだろう。
僕は落ち込みながらメールを返信する。
『チョコはあんまり作った事無いから、詳しく分からないな』
『そっか。それじゃあ、今から色々研究するんで、また明日ね』
それっきり今日はメールは来なかった。そして、僕は安奈の『また明日ね』と、言う言葉に何の意味があるかもわからぬまま、ゆっくりと時を過ごしていったのだった。
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愛読してくださる方々には、とても感謝しております。
僕は恋愛経験がそんなに無いため、この小説を書くのに悪戦苦闘しており、今物凄く行き詰っております。こう言うのをスランプと言うのでしょう。
そのため、更新が大分遅れてしまうかもしれません。
愛読する方々には申し訳ないと思いますが、何とか早い内にスランプを脱出したいと思います。
これからも、気長に宜しくお願いいたします。