第五通 梅雨の日の決心
もう梅雨の時期だ。
外は雨が降り、湿気で教室内がジメジメしていた。この時期はなぜか、教室の中が暗く感じる。
そんな事を思いながらも、安奈にメールを送った。
最近は慣れてきたのか、自分からメールを送るようになっていった。と、言うより、彼女の事が気になっていた。
それに、気付いたのも、つい最近の事だった。
お互いの顔を知らないため、僕の中で彼女がどんな顔なのかと想像が膨らんでいった。
『もう、梅雨の時期だな・・・・・・。
この時期が、一番嫌いかな・・・・・・。そっちも雨?』
と、送った。返事が返ってきたのは、次の休み時間になってからだった。
『うん。こっちも雨。どうして、こうも雨が続くのかな?
何だか、憂鬱になっちゃうよね?』
そのメールにすぐに返事を返そうとしたが、そこに健介がやってきたのだった。
健介は僕の前の席に座り、いつものように顔を覗きこんだ。
「な、何?」
恐る恐る、僕はそう言った。表情を変えない健介を見ていると、とても怖かった。
そして、急に僕の肩に手を置いて、
「俺に誰か良い娘、紹介してくれよ!」
その言葉に僕はポカンと口を開けて、呆気に取られてしまった。何を言うのかと思えば、女を紹介してくれと・・・・・・。
学校でも目立たない、この僕に、紹介できる女の子がいるわけが無かった。
唯一いると言えば、安奈くらいだが・・・・・・。
絶対に紹介したくなかった。色々と聞いてくるだろうし、健介に紹介したら僕とメールをしなくなりそうだったからだ。
「僕に女の子の知り合いがいると思う?」
その言葉に健介はあっさり納得した。
「そうだよな。お前に女の知り合いなんていないよな」
健介は僕にそう言い残して、僕の目の前から消えていった。
この時、僕は絶対に安奈の事を健介に知られてはいけないと思った。
それと同時に決心した。安奈とのメールのやり取りを誰にも言わないと・・・・・・。