第四十七通 白い妖精
ゆっくりと静かに流れる、僕の作ったオルゴールの音。その音は小さく、僕等の目の前を通る人達の耳には届いていない。
そのオルゴールの音を聞いていると、ゆっくりと白い粉が空から降りてきた。真っ白く柔らかな粉の様に、夜空を舞いながらゆったりと降りてきた。
まるで、オルゴールの音につられて、空から降りてきた妖精の様だった。
「……雪」
オルゴールの音を聞いていた、安奈が静かにそう言った。僕も、何か言わなきゃと思ったが、出た言葉は、
「そうだね」
だった。どうしても、いい言葉が見つからなかった。
そんな僕の方を見て、安奈が優しく微笑んだ。その微笑んだ顔が、とても可愛く僕もそれにつられて微笑んだ。
「綺麗な雪だね」
「そうだね。夜空を舞う桜の花びらの様だね」
「う〜ん。それは、ちょっとクサイかな?」
安奈はそう言ってクスクスと笑っている。そう言われると、急に恥ずかしくなり、僕は顔は熱くなった。
そんな僕の顔を見て、安奈は更にクスクスと笑い出した。
「顔が真っ赤だよ。恥ずかしいなら、言わなきゃよかったね」
「本当だよ。ちょっと、良い言葉だと思ったのに……」
肩を落としながら僕はそう言った。暫く、間が空いて安奈がゆっくり立ち上がりながら言った。
「でも、私は好きだよ。さっきの言葉」
「エッ!?」
「だって、なかなか言えないよ。あんなクサイ言葉」
そう言って、安奈はオルゴールの蓋を閉じて、クスクスと笑っている。きっと、僕の事をからかっているのだろう。
「何だよ。もうその話はいいよ」
「え〜っ。でも、面白いじゃない」
「僕は全然面白くないよ……」
僕がそう言って落ち込むと、安奈が優しく頭を撫でながら言った。
「よしよし。そんなに落ち込まないの」
「よしよしじゃないよ。それに、落ち込ませてるの安奈じゃないか」
「ごめんごめん。もう言わないから」
安奈は両手を合わせながら、そう言った。まぁ、別に怒ってるわけじゃないし、結構安奈とこうやってるのも、僕にとってはとても楽しかった。
「それじゃあ。そろそろ、帰ろうか」
安奈はそう言って、ゆっくりと歩き出した。この時、僕の心で一つの決心がついた。それは、告白をすると言う決心だった。
僕はベンチから立ち上がり、ゆっくり安奈の方に体を向けて、はっきりとした声で言った。
「安奈!」
僕の言葉で安奈が、ゆっくりと振り返り僕に微笑みながら返事を返した。
「何? どうかした?」
向かい会う、僕と安奈の間には沈黙が続いた。まるで、時が止まったかの様だった。
「安奈に伝えたい事が……」