第四十六通 クリスマスプレゼント
気を失っていた僕が目を覚ましたのは、安奈の膝の上でだった。目を開くと、安奈が僕の顔を覗きこんでいて、僕は驚いてすぐに体を起こした。
辺りは随分と静かになっていて、日も落ちて辺りは明かりが点灯していた。その事から、随分と眠っていたのだとわかった。
何だか、申し訳なく安奈の顔を見る事が出来なかった。黙っている僕に、安奈がゆっくりと口を開いた。
「もう、大丈夫? いきなり倒れちゃうから驚いたよ」
「ご……ごめん」
僕は深々と頭を下げた。そのまま、ずっと頭を下げていたいと思っていたが、優しく安奈が言った。
「もういいよ。私、気にしてないから」
その言葉に僕はゆっくりと、頭を上げた。そして、ゆっくりと安奈の顔を見た。優しく可愛らしく微笑んでいる。
安奈の手には、綺麗な紙袋を手に持っていた。その中に僕へのクリスマスプレゼントが入っているのだと、何となく察知した。
僕は自分の持っていた紙袋を探した。キョロキョロしていると、安奈が口を開いた。
「もしかして、これ探してる?」
「あっ!」
安奈は僕に紙袋を手渡した。その紙袋は、確かに僕が持っていた紙袋だった。僕はそれを受け取り、中を確認した。中には綺麗に包まれた四角い箱が入っていた。まだ、プレゼントは開けられていないようだ。少し安心した僕に、安奈が持っていた紙袋を差し出した。
「これ、クリスマスプレゼント。何にしようか迷ったけど、結局マフラーにしちゃった」
そう言って安奈は微笑んでいる。僕はその紙袋を受け取り、中身を見た。中には手編みのマフラーが入っていた。
あまりの嬉しさに、失神してしまいそうだったが、何とかそれを堪えた。
「ありがとう。嬉しいよ」
僕はとりあえず、中からマフラーを出し、首に巻いた。とても、暖かく気持ちがこもっている感じがした。
そして、今度は僕が安奈に紙袋を差し出した。
「これ、僕からのクリスマスプレゼント」
僕が差し出した紙袋を受け取った安奈は、ニコニコ笑みを浮べながら紙袋の中から、綺麗に包まれた箱を取り出した。
器用に包みを開いていと、真っ白な箱が現われた。安奈はその箱をゆっくりと開いた。
その中には、綺麗な箱の木箱が入っていた。それが、オルゴールだ。
「すご〜い。手作りのオルゴールだ」
嬉しそうにオルゴールを見ている安奈を、見ていると僕は嬉しくて仕方なった。
「マサが作ったの?」
「うん。和彦の知り合いの所で」
「そっか。嬉しい。世界で一つだけのオルゴールだね」
可愛らしく微笑んだ安奈は、ゆっくりとオルゴールの蓋を開いた。すると、ゆっくりと静かに、ジングルベルのメロディーが流れた。
所々で少し音を外すが、何とかジングルベルだとわかる。
二人の間に暫しの沈黙が続いていた。ジングルベルのメロディーだけが流れ、静かに時が過ぎていく。