第四十五通 久しぶりの遊園地
久しぶりにやって来た遊園地には、やけにカップルが沢山いた。まぁ、それはクリスマスだからだろう。
次々と目の前を通り過ぎるカップルを、目で追いながら少し呆れていた。そんな僕の横で、安奈が嬉しそうに声を上げた。
「凄いね。結構、賑わってるよ」
「まぁ、クリスマスだから……」
僕は少し元気のない声で言うと、不満そうな顔で安奈が僕の顔を覗きこんできた。それに、驚いた僕は2・3歩後退した。
「な、何?」
「何? じゃないでしょ! ほら、元気出して行くわよ」
「う、うん」
本来なら、安奈と一緒で嬉しいのだろうが、昨日はなかなか眠る事が出来ず、寝不足で体が重かった。そんな状態でも、何とか安奈の前では元気に振舞おうと思った。
僕と安奈が始めにやってきたのは、ホラーハウス。まぁ、お化け屋敷と変わらないのだろうが、立体映像のお化けが出るとか出ないとか。
まぁ、別にお化けが怖いわけじゃないしと、軽い気持ちでホラーハウスに入った僕だったが、出てきた時には背筋に冷や汗を掻いていた。
「結構迫力あったね」
「そ、そうだね」
安奈は清々しい顔で笑っているが、実際は凄いリアルな立体映像の化け物が出てきて、とても恐ろしかった。暫く来ていない内に、遊園地のお化け屋敷も大分変わったようだ。
「ねぇ、どうかした? 顔色悪いよ」
不安そうに安奈は、僕の顔を覗きこんだ。そんなに、僕は顔色が悪いのだろうか?
自分の顔色を見る事が出来ないので、分からないが相当顔色が悪いらしい。
「少し休もうか?」
「大丈夫。さぁ、次行こうか」
無理に微笑みゆっくり歩き出した。多分、眠気がピークに達しているのだろう。
心配そうにしていた安奈も、少し安心した様な顔をして、次の場所に移動した。
「次は、これにしよう」
「これって……」
そこにあったのは、絶叫マシンだった。あんまり、絶叫マシンが好きじゃなかった。と、言うか高所恐怖症で、高い所は苦手だった。
少し半笑いでその場に立ち尽くしていると、安奈が楽しそうに笑みを浮べながら僕に手を振って言った。
「ねぇ、早く乗ろうよ」
どうするか、迷ったが僕に選択の余地は無かった。返事をしない僕の腕を、安奈が引っ張り無理やり絶叫マシンに乗せられた。
その後、僕の意識は無くなっていた。完璧に気絶し、暫く目を覚ます事は無かった。