第四十三通 前日
僕と健介は、ようやくオルゴールを完成させた。その結果、学校を丸々一週間近く休み、その代償として、冬休みに補習を受ける事になった。何のために、中間テストと期末テストを頑張ったのか……。
まぁ、それでも、このオルゴールを貰った安奈の喜んだ顔が見れたら、いいなと思っていたが、安奈がこのオルゴールを貰って、本当に喜ぶのかと考えると、何だか不安になった。
完成したオルゴールを手に、僕と健介は帰路についていた。
「そう言えば、お前は何の曲にしたんだ?」
「僕は、クリスマスプレゼントだし、ジングルベルかな。健介は?」
僕がそう訊いて健介の方を見ると、何やら不安そうな顔をしていた。それが、なぜか僕には分からなかった。
「どうかした?」
「いや……。俺、何も思い浮かばなかったから、彼女の好きな曲をオルゴールにしたんだが、普通はクリスマスソングだよな……」
「別に、気にすること無いよ。それに、彼女の好きな曲なら大丈夫だよ」
そう言って、健介を励ましたが、結局最後まで落ち込んだままだった。何とか立ち直って欲しかったが、こう言う事になると結構引きずるらしい。
「それじゃあ。僕はこっちだから」
「じゃあな……」
フラフラしながら、健介は帰っていった。僕はその健介の後ろ姿を、暫く見ていたが、冷たい風が吹いたのですぐに家に帰った。
鍵を開けて、誰も居ない家の中に、いつもの様に「ただいま」と、言って靴を脱いだ。電気は消えているので、家の中は暗かったが、とりあえず、2階にある自分の部屋に行き、鞄を置いて制服を着替えた。
そして、すぐに1階のキッチンに移動した。その理由は、恵利に頼まれていたケーキを、作らないと行けないからだ。親がなかなか家に帰らないため、僕は幼い頃からクリスマスケーキや誕生日ケーキを、自分で作っていた。そのため、今ではケーキを作るのも料理を作るのも、結構上手くなってきていた。
「さて……。材料は、恵利が買ってきてあるから……」
材料を全て集めると、ケーキ作りを開始した。今年は、僕が出かけると言ったので、家で友達を呼んでパーティーをすると、恵利は言っていた。だから、いつもより大きなケーキを作ろうと考えていた。
ケーキ作りを始めて、暫くすると恵利が帰ってきた。
「オッ、やってるね」
「やってるよ。一応、約束だから」
「それじゃあ、頑張ってね」
そう言って、恵利はその場を去っていった。その日、僕は遅くまでケーキを作っていた。