第四十通 冬の屋上
あれから、学校で色々と言われる様になったが、健介と和彦は僕の事をいつも助けてくれていた。
そして、その騒動も一週間後、美樹が学校に来て、ようやくおさまった。美樹とはまだ、一言も言葉を交わしていない。当然の事だろう。きっと、僕の事を嫌っているだろうから……。
そんな僕は、騒動がおさまったがなるべく、教室に居ないようにしていた。教室に居ると、他の生徒の視線が冷たく、僕に集まる様な気がしたからだ。そのため、12月という寒い時期に、屋上で一人寂しく弁当を食べていた。
まぁ、この寒さだと誰も屋上には、来ないだろから心が落ち着いた。たまに、健介や和彦が来る事がある。そして、今日は健介が来ていた。
「なぁ、そろそろ、教室で弁当食ってもいいんじゃないのか?」
「うん……。でも、あんまり教室には居たくないから……」
「でもよ、こうも寒いと風邪引くぞ」
健介はそう言って腕を組んでブルブルと震えている。僕は随分この寒さに慣れたせいか、あんまり寒いと感じない。慣れって、本当に凄いと思う。
「そう言えば、そろそろ教えろよ。お前の好きな人を」
「ぼ、僕の好きな人!?」
いきなり健介の切り出した言葉に、思わず口に入っていた物を噴出してしまった。
「うわっ、きたねぇ〜な!」
「け、健介が変な事言うからだよ」
「何だよ。人のせいにするのか!」
拳を振り上げて、健介はそう言った。だが、すぐに笑い出した。
「ハハハハッ。そんな事より、早く聞かせろよ。お前の好きな人を。和彦は知ってるんだろ」
「何で、そこで和彦が出て来るんだよ」
そう言った僕の肩に健介は腕を回し、ゆっくりを首を絞めた。
「言わないと、もっときつくなるぞ」
あまりに苦しかったので、僕は思わず言ってしまった。
「わ! わかった。お、教えるから!」
「最初っから、そう言えばいいんだよ」
そう言って、健介は力を緩めた。本当に、力だけはある。って言うか、筋肉馬鹿。いや、野球馬鹿かな。まぁ、どちらにしてもあんまり変わらないような気が……。
僕はそう思いながら、咳き込んでいた。
「ゴホッ! ゴホッ!」
「オイオイ、大丈夫か? もしかして風邪か?」
いや、違う。これは、健介に首を絞められたせいで、出た咳だ。一瞬、意識を失いそうになったが、何とか踏みとどまったのだ。
そして、僕は健介に安奈との事を話した。出会いから、今までの事を全て。すると、健介は羨ましそうにしていたが、僕が健介の彼女の話を訊くと、すぐに嬉しそうに彼女の話をし始めた。