第四通 小さな事
今日も、ベッドに横になって漫画を読んでいると、机の上で携帯が着信音を響かせた。
相変わらず、学習せず、僕は体を起こして必死に机の上の携帯に手を伸ばした。
あと少しで手が届きそうだ。だが、結局この日もベッドから落っこちた。
頭を摩りながら立ち上がり、机の上の携帯を手に取りメールを確認した。
『最近は、この時間でも外は明るいね。私の性格みたい(笑)
今日はとっても疲れたわ。何度も麦茶を作らされて・・・・。
全く、マネージャーは家政婦じゃないのよ(怒)』
それに対し、僕は、
『大変だったね。もう、五月も半ばだからね。
ずいぶん暑くなって来たから、喉が渇くんだろうね。』
と、返事を返した。暫くすると、すぐに返事が返ってきた。いつもは、もっと遅いのだが・・・・。
そう思いながらもメールを見た。
『そうだよね。もうすっかり、夏だよね。
私も、日焼けしないようにしなきゃ!
マサも、日焼けしないようにね。』
日焼けなんて、するはずがない。
僕は帰宅部でほとんど、外で走り回ったりしない。
だから、日焼けなんてする訳がない。
そう思いながら、深いため息を吐いた。
そして、もうすぐ七時だと言うのに明るい窓の外を眺めた。
『僕は帰宅部だから、日焼けはしないと思うよ』
僕はそう返事を返して、ゆっくりとベッドの上に置いた漫画を取りにいった。
漫画を手に取った瞬間、携帯の着信音が鳴り響いた。
やはり、今日はやけにメールを返すのが早かった。
『そんな事ないよ。紫外線は凄いんだから!
油断してたら、すぐに日焼けしちゃうよ!
気をつけなきゃね』
『まぁ、気をつけるよ。それより、今日はやけに返事返すの早くない?』
僕は、メールを返すのが早い理由を聞くためにそう送った。
そして、すぐに返事は返ってきた。
『今日は、後片付けは一年生がやるんだって。だからかな?
まぁ、私がやってもいいんだけどね。
それより、マサは今日何かいい事あった?』
とりわけ、いい事があった訳でもなく、嫌な事があったわけでもない。
そんな返事を返すわけにもいかず、僕は必死に考えた。
朝からの行動の一部始終を思い返した。そして、出した答えは・・・・。
『まぁ、いたって普通だったかな?』
『普通って・・・・。何か一つ位、いい事無かったの?』
しいて、上げるならば英語の授業で指名を受けなかった事くらいだろうか。
いや、そんな事を返しても、仕方ないし・・・・。悩んでると、向こうからメールが来た。
『無いなら、いいや。そんな日もあるからね。
私はね。今日は結構ラッキーだったかな。
遅刻しなかったし、授業では一度も当てられなかったし。
いつもなら、バンバン当てられるんだけどね』
小さい事だと思ったが、そんな事でよかったのかもしれない。
それだけでも、結構盛り上がるものだ。
その後も、僕と安奈のメールは続いた。