第三十七通 ファミレス
僕と美樹が見た映画は、恋愛映画らしく。何だかよく分からないが、感動的な映画だったらしい。僕にはよく分からない内容の映画だった。と、言うか途中睡魔と格闘していたため、殆ど見ていなかった。
「凄く、感動的でしたね」
「そ、そうだね……」
一応、美樹にそう返事を返した。見ていなかったと言ったら、何だか美樹に悪いと思ったからだ。
「お腹、空きませんか?」
「そうだね。もう、お昼だからね」
「それじゃあ、あそこでお昼食べませんか?」
美樹はそう言って、ファミレスを指差した。まぁ、お金もボチボチ持っていたし、お腹も空いていたので、とりあえずファミレスでお昼を食べる事にした。意外とファミレスは空いていて、静かだった。
僕はメニューを見ながら、何を食べるか悩んでいた。しかし、結構値段が高い物ばかり、並んでいる。これは、安い物を頼んだ方が賢明だろう。そう思った瞬間に、ウェイトレスがやって来た。
「ご注文は?」
「僕はサンドイッチセットで……」
とりあえず、一番安いサンドイッチセットを頼んだが、何だかカッコ悪い。
「それじゃあ、私も同じ物を」
「サンドイッチセットをお二つですね。少々お待ちください」
そう言ってウェイトレスは奥へと行ってしまった。暫く沈黙が続いたが、美樹がその沈黙を破った。
「倉田君、恋愛映画って嫌いですか?」
「エッ!? 急に、どうしたの?」
「いえ、あんまり映画の話をなさらないので、嫌いだったのかと……」
物凄い観察力だ。だが、別に恋愛映画が嫌いと言うわけじゃない。ただ単に、映画を見たのも久しぶりだったし、美樹とこうして食事をするなんて、思ってなかったから結構、緊張していた。
「いや、別に恋愛映画が、嫌いって訳じゃなくてさ……。あんまり、映画を見ないから、何を話したらいいかと思って……」
「そうですか。もしかして、迷惑でした?」
「全然、迷惑じゃないよ。僕も、暇だったから」
僕はそう言って微笑んだが、美樹は複雑そうな顔をしていた。その後、沈黙が続いた。こんな時、どうしたらいいのか、僕には分からなかった。