第三十四通 時の流れ
時は流れ、11月も終ろうとしていた。11月は特に目立った行事も無く、アッと言う間に過ぎた。そして、待っていたのは期末テストだった。
つい最近中間テストをやった、ばっかりだというのに……。全く、時と言うのは進むのが早い。教室の中は、やたらとピリピリしている。この雰囲気が僕は苦手だった。流石の健介も今回は、真面目に勉強をしていた。野球部の顧問に、テストの成績が悪い事がバレたらしい。
まぁ、そのおかげで、今は平和に過ごせるのだが、今にとんでもない事を言い出すに違い無い……。そう思いながら、机にうつ伏せになっていると、やはり奴の声が僕の前の席で聞こえた。
「うがーーーーっ! マサ!」
その声に、顔を上げると目の前に、血走った目の健介の姿があった。それに、驚き僕は仰け反り、そのまま床に倒れた。その勢いで、床に後頭部をぶつけて一瞬、危うく気を失いそうになった。
椅子を起こして、僕は頭を摩りながら椅子に座った。冷たい視線が、僕の体を突き刺していた。僕は、周りを気にしながら、健介の方を見た。
「ど…どうしたの?」
「駄目だ! 全然、頭にはいらねぇー」
恐る恐る口を開いた僕に、健介は大声でそう言った。また、クラスの視線が僕の所に集まる。僕が悪い訳じゃないのに、皆の視線が僕が悪いと言わんばかりに、突き刺さる。
「け…健介、もう少し小さい声で……」
「俺は、どうすればいいんだー。教えてくれー」
健介に僕の声は届いてなかった。周りの皆には申し訳ないが、こうなった健介は僕には止められない。
「こうなったら!」
「こうなったら?」
「カンニングするぞ」
「か、カンニン…!?」
急に小声で健介はそう言って、僕が驚きの声を上げようとするのを遮った。また、とんでもないことを言い出した。それに、巻き込まれる僕の身にもなって欲しい……。
その後、何とか説得して、カンニングは取り止めになったが、健介が赤点を取らない様に、僕の家でテストまで勉強会をする事になってしまった……。これじゃあ、暫く安奈とメールが出来そうに無かった……。