第三十一通 昼休み
授業中、僕は安奈の誕生日の事を考えていた。
今日が誕生日だと言う事がわかったが、やはりプレゼントはあげたいと思ったのだ。しかし、彼女がどこに住んでいるのか、分からないためどうしたものか、考えていた。
そんな僕の頭に、一人の人物が浮かび上がった。それは、和彦だ。和彦は安奈と同じ中学だったから、安奈の通う高校とか分かるはずだと、思ったのだ。
僕は、昼休みに和彦を呼び出した。
「珍しいね。ユキが俺と昼食をとるなんて」
和彦は笑いながらそう言って、箸を口に運ぶ。流石に、切り出し難かった。安奈と付き合っているかもしれないと、思っていたからだ。そんな僕に、和彦が口を開いた。
「もしかして、鈴木の住所が知りたいとか?」
「エッ!?」
「分かりやすいよな。ユキは」
和彦はそう言って笑ってみせる。多分、僕の安奈に対する気持ちを、すでに悟っていたのだろう。いつから、ばれてたのか分からないが、やっぱり和彦は凄いと思った。
「鈴木の住所教えるのはいいけど、結構遠いぞ?」
「そ、そうなの?」
「あぁ。実家は近いけど、今は高校の寮で生活してるらしいからな」
「そうなんだ……」
「まぁ、そんなに気を落とすなって、プレゼント渡すなら今から行った方がいいぞ」
そう言って和彦は笑った。和彦は僕の恋を応援してくれているようだ。何だか、嬉しかった。
「ありがとう。でも、授業もあるし……」
「授業より、恋の方が大切さ。一度チャンスを逃せば、もうチャンスは回ってこないぞ」
「そうなのかな?」
「そうだって。授業なら、後で俺がノートかしてやるからさ」
和彦は僕の背中を叩いてそう言った。気持ちはとてもありがたいが……、僕と和彦は違うクラスなのだ。まぁ、その事は言わずに気持ちだけを受け取った。
「ありがとう。わかったよ。行ってみるよ」
「よし、それじゃあ、これが寮のある場所だ。行って来い」
「うん。行って来るよ」
僕はそう言って、和彦に手を振りながら学校を後にした。後先も考えずに、学校を飛び出したが、肝心のプレゼントを買ってない事に後になって気付いたのだった。