第二十八通 季節の変り目
中間テストを無事乗り切った、僕はベッドに横になって漫画を読んでいた。
最近、テスト勉強や文化祭準備などで、ゆっくり漫画を読む機会がなかったため、それがとても新鮮に感じていた。
そんな時、机の上で携帯の着信音が響き渡る。安奈からのメールだ。
そう思いながら、漫画をその場に伏せると、いつもの様にベッドから手を伸ばした。そして、いつもの様にベッドから、逆さまに落ちた。
凄く鈍い音が辺りに響き、隣の部屋から恵利の声が響いた。
「お兄ちゃん! 凄い音したけど、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。ちょっと、ベッドから落ちただけだから」
僕はそう返事を返して、携帯を開いた。
『う〜っ……。辛いよ〜。実は、今日風邪で寝込んでます……。とっても苦し〜よ〜。折角の休みなのに……(泣) 気持ち悪いよ〜』
風邪か……。確かに、もう11月と言うだけあって、結構外は冷え込んでいる。
僕も風邪を引かない様に気をつけないと、と思いながらメールの返事を送った。
『風邪か……。季節の変り目は、風邪を引き易いからね。でも、メールしてて大丈夫なの? ゆっくり寝てた方がいいって』
暫くメールの返事は無かった。寝たのかと思い机に携帯を置いて、ベッドに横になって天井を見上げていると、また携帯の着信音が鳴り響いた。安奈からのメールだ。
僕は急いでベッドから手を伸ばしたが、結局ベッドから逆さまに落ちた(本日2度目)。
「ちょっと! 今度は何?」
恵利の声が隣から響く。流石に何度も、ベッドから落ちたと言うのは、変かと思いでた言葉は、
「本棚が倒れた!」
だった。我ながら最悪な言い訳だ。本棚が勝手に倒れるはずがないのだから……。その後、恵利の声が聞こえなくなり、代わりに隣の部屋から音楽が鳴り響いていた。
まぁ、何はともあれ、安奈からのメールを見る事にした。
『ありがとう。今日はゆっくり、休みます……。元気になったら、メールするね……。マサも風邪には気をつけて』
流石にこの後、安奈に返事を返したらまずいと思い、そのまま携帯を机の上においてベッドに座った。
読んでいた漫画の事など忘れ、安奈の事が心配でたまらなかった。早く、安奈の風邪が治る事だけを、考えていた。