第二十五通 三人だけの勉強会
僕の部屋は静まり返っている。
しかも、重い空気が立ち込めている。
そんな中、健介が僕の耳元で囁いた。
「おい……。なんでこいつがいんだよ」
こいつとは、和彦の事だった。僕が誘ったのだ。
和彦は僕の誘いを快く了承して、勉強会に参加しているのだ。
結局、健介の彼女はこれなくなり、僕と健介と和彦の三人で勉強会をしている。
「だって、和彦は成績いいから……」
「だからってな!」
健介は和彦の事が苦手だ。
一年の時に色々とあったため、それ以来和彦の事を避けていたのだ。
そんな和彦が僕と健介の方を見て軽く微笑み口を開いた。
「何? どこか分からない所でもあった?」
「ううん。何でも無いよ」
僕は苦笑いをしながら首を横に振った。
すると、和彦が笑顔でまた口を開いた。
「わからない所があったら、何でも俺に聞いていいからさ」
何て爽やかな笑顔だ。
女子生徒がキャーキャー言う理由が分かった気がした。
とりあえず、僕と健介は自分のノートに向い合った。
時計の時を刻む音とノートにペンが走る音だけが、部屋の中に響いていた。
そんな時だ。
「ただいまー」
と、妹の恵利の声が玄関の方から聞こえた。
そして、二人の女子生徒の声も微かに聞こえた。
「恵利の家、誰もいないの?」
「本当、静かですね」
その声は静かな廊下を通り、僕の部屋まで丸聞こえだった。
「恵利ちゃんが友達連れて帰ってきたようだぜ」
「恵利も勉強会でもするのかな?」
「それなら、俺達も混ざらないか?」
健介が楽しそうに笑いながらそう言ったが、僕としてはあんまり混ざりたくは無い。
そんな僕の気持ちを察したのか、和彦が健介に言った。
「俺としては、混ざりたくは無いな。向こうの勉強の邪魔になるかもしれないからな」
「別にお前は混ざらなくていいじゃないか。俺とマサは混ざってくるから」
健介はそう言って僕の肩に腕を乗せる。
和彦の目が僕に正直に言った方がいい。と、言う目をしていた。
だから、僕は正直に言った。
「ぼ…僕はいいよ。恵利達の邪魔しちゃ悪いし……」
「何だよ……。なら、俺もいいわ」
ため息を漏らしながら健介はそう言った。
物凄く落ち込んでいたが、暫くしたら真剣に勉強に取り組んでいた。
何だかんだ言って、結構健介と和彦は仲がいいような気がした。