第二十四通 健介の考え
文化祭が無事に終わり、十月に残されたイベントは中間テストだけだ。
結局、僕は安奈と和彦が付き合っているのか、わからないままでいた。
学校の授業は、すでにテスト勉強となっているため、アチコチから教えあっている声がする。
一応、僕も勉強をしている。
流石に今回赤点だと、まずい気がしたからだ。
数学の教科書を開き、暫く数式を見ていた。
そこに、いつもの様に健介がやってくる。
健介は僕の前の席に座り、何も言わず僕の顔を見ている。
何も言わないと、言うのがまた怖かった。
だから、僕の方が先に声を掛けた。
「どうかした?」
その僕の言葉を待ってましたと言わんばかりに、健介が満面の笑みを浮かべている。
何かとても嫌な予感がした。
僕の顔は自動的に引きつった笑顔になっていた。
そんな僕に健介がゆっくりと口を開く。
「実はな。お前に頼みたい事があるんだ」
「た、頼みたい事?」
声が少し震えたが、健介は気付いていない。
「ああ。お前にしか頼めない事だ」
「ぼ、僕にしか、頼めない事?」
更に声が震えたが、やはり健介は気付かない。
そして、話は本題に入ったが、それは結構意外な事だった。
「と、言う訳で、今日はお前の家で勉強会だ」
「別に構わないけど……」
「何だ? 言いたい事でもあるのか」
健介はそう言って僕の顔を見ている。
言いたい事はあるが、中々言い難い事だった。
だが、僕は意を決して言った。
「ぼ、僕も健介も成績悪いじゃない……」
「そうだな。それが、どうした?」
「だから…その……。勉強にならないんじゃないかな?」
「ンッ? それ、どういう意味だ?」
睨みをきかせながら、指の骨を鳴らしながら健介がそう言う。
恐怖で唇が震えたが、僕はさらに言葉を続けた。
「いいいや……。お、おお教える人が、いないと……。べ、べべ勉強にならないんじゃないかなって」
僕のその言葉に健介は「う〜ん」と唸り声を上げながら考えていた。
そして、暫くして出た言葉が、
「大丈夫だ。俺の彼女呼ぶからさ」
だった。
呆れて言葉も出なかった。
その理由は健介の彼女の学年にあった。
健介の彼女は確か、野球部のマネージャーの一年生だったはずだ。
僕らは二年生で、一年生がどうやって二年生に教えるというのだ。
とりあえず、出たのは深いため息だけだった。