第二十二通 お似合いのカップル
午後に入り、ようやく休憩に入った。
安奈が学校に残っていると言う保障は無いが、一応メールを送った。
『やっと休憩に入りました。
もしかして、もう帰っちゃった?』
メールを送った後、僕はすぐに教室に出た。
そんな僕の前にあの男が現われた。
とっさに背を向けて逃げようとしたが、その男にすぐに捕まってしまった。
「おい! 何で逃げようとするんだ!」
「べ、別に逃げようなんて……」
僕はゆっくり振り返り微笑んだ。
もちろん作り笑いだった。
ついでに、その男とは言うまでも無く、健介だった。
「まぁいいや。お前、今休憩時間だろ。野球部に来い」
「エッ、でも……」
「何だ? 俺の誘いを断るのか?」
ボキボキと、指を鳴らして僕を睨む健介。
まるで、ドラ●もんに出てくるジャ●アンの様だ。
結局、断る事が出来ず、健介に連れられ野球部に向った。
野球部は的当てをしていた。
そんなのに、全く興味はなかったが、結構いい景品があると言う事で、客も沢山来ていた。
「それじゃあ。俺はやる事あるから、お前はちゃんと並んでろよ。
もし、途中でいなくなったら、後で痛い目見るぞ」
「う…うん。わかってるよ」
僕の返事を聞くと鼻歌を歌いながら健介は去っていった。
すでに、携帯には安奈からのメールが届いていた。
『まだ、帰ってないよ。まだ、見てない所とか一杯あるから。
それにしても、お腹空いたな〜。と、言うわけで一緒に昼食でも食べようよ。
私、校門前で待ってるからね』
どうするか迷った。
ここを離れれば、健介に後で何をされるか分からない。
だが、校門前で僕を待っている安奈。
結局、僕の出した結論は、安奈の所に行くと言う事だった。
校門前には、確かに安奈がいた。
ただし、一人ではない。
他に一人の男がいた。
僕と違い、顔立ちもよく、背丈も高い。
簡単に言うと、モデルの様な感じだ。
そんな男と安奈が楽しげに話をしていた。
何か声掛けにくいし、お似合いって感じ――。
僕は暫く動けなかった。
そんな僕に気付いた安奈が手を振って声をかけた。
「あっ、マサ」
「マサ?」
男が僕の方を見る。
そして、微笑みながら言った。
「マサって、ユキの事だったのか」
「和彦君、マサと知り合い?」
和彦。
確かに、僕は彼を知っている。
と、言うかこの学校で彼を知らない者はいない。
名前は白羽 和彦。
彼は学園一カッコよく、頭もよく、スポーツ万能。
非の打ち所がない、完璧な男だ。
和彦とは一年の時同じクラスだった。
とても優しく、リーダーシップもあった彼は、よく僕の事を気に掛けてくれた。
僕が健介にいじめられてるんじゃないかと心配してくれた。
そんな和彦は僕にとって、憧れの人物像だった。
「ああ、一年の時に同じクラスでな。
って言うか、俺的には鈴木がユキと知り合いだって事が、びっくりだぞ」
「エヘヘヘッ。ちょっとね」
白い歯を見せながら安奈はそう言った。
この二人の間に入っちゃいけない気がした。