第十四通 海
僕は今日、安奈と一緒に海に来ている。空は蒼く澄み渡り、海に来るには絶好の日だ。
白く輝く砂浜、蒼く煌く海に白い波。これ以上、最高の条件はない。
砂浜にはいくつものビーチパラソルが差してあって、大勢の人が押し寄せていた。
「やっぱり、人が多いね」
そう言って海を見て微笑んでいる安奈の横顔に見とれていた。
綺麗だった。海のきらめきが安奈を更に美しく見せていた。
ボーッとしていると、顔を安奈が覗きこんだ。びっくりした僕は、後ろに仰け反り尻餅をついた。
「どうしたの? もしかして、眠れなかったとか?」
「まぁ、そんな感じかな?」
立ち上がりながら、ズボンに付いた砂を払って微笑む。
そんな僕に安奈は微笑み返して言った。
「それじゃあ…。私は着替えてくるね」
着替えてくるという言葉に、一瞬戸惑った。海に来て、着替えると言えば一つしかなかった。
だが、念のために聞いてみる事に。
「着替えるって?」
そう聞くと、安奈は少し頬を赤く染めた。いや、僕にはそう見えたのだ。
「水着よ! み・ず・ぎ!」
「み、水着!!」
やっぱりそうだった。その瞬間に、気が動転し目の前が真っ白に……。
安奈の水着姿が見れるという喜びで、胸が一杯にだった。
荷物を砂浜に置き、水着に着替えに行った安奈の帰りを待つ事にした。
暫くすると、安奈の声が背後から聞こえた。
「着替えてきたよ」
その言葉で振り返った僕の顔に、真っ白のバスタオルが飛んできた。バスタオルは、僕の顔に被さり視界を遮る。
そのバスタオルを急いで取って安奈の方をみた。
水玉の水着を着た安奈が僕の目の前にいた。水着姿はやっぱり可愛く、心が癒される。
僕が安奈の水着姿に見とれていると、安奈が恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
「ジロジロみないで……。恥ずかしいから……」
「ご、ごめん」
一応、謝って目を逸らしたが、やはりすぐに安奈の方に目がいく。
それが、男の習性みたいなものだ。僕と安奈は二人でビーチボールをする事に……。
しかし、結果は圧倒的な強さ(僕が弱すぎた)を見せつけ、安奈の圧勝に終わった。
その後は、砂浜に座り二人で何気ない会話で時を過ごした。
海にまで来て、話をして終わるなんてどうかと思ったが、安奈の水着姿も見れて、僕的には満足している。
帰る頃には、日が海に沈みかけ、オレンジ色に染まっていた。
「楽しかったね。また、メールするね」
彼女はそう言って僕に微笑む。
オレンジ色に輝く海をバックに微笑んだ安奈の顔は、とても美しく忘れる事は出来ないだろう。