第十三通 海への誘い
僕はまた安奈とメールのやり取りを再開していた。
暫くやっていなかったせいか、僕も安奈もいろんな話題で盛り上がった。
部活の話や身近な出来事を聞かされた。たまに、愚痴も聞かされたが、それでも、僕は嬉しかった。
彼女とまたメールができる事が……。
夏休みももう終わりに近づいたある日の事。
『もうすぐ、夏休みも終わりだし、一緒に海にでも行かない?』
安奈が海に行かないかと誘ってきた。
別に海は嫌いじゃない。だが、あんまり行きたくない場所でもあった。
実は僕はカナヅチだ。
全く泳げないため、海には近づかないようにしている。
しかし、ここで断ったりしたら嫌われるんじゃないかと思い、とりあえずOKしたがすでに後悔していた。
話し合った結果。
早い方がいいと言う事で、明日行く事になった。
『明日は、私が弁当を作って行くね。
楽しみしててね。美味しく作るから』
もちろん、楽しみだ。楽しみで仕方なかった。
が、その一部で不安が頭をよぎる。
やっぱり男は泳げた方がいいのだろうか……。
そんな事を考えながら、返事を返した。
『うん。明日は、楽しみにしてるよ』
『それで、マサは泳げる?』
やはり、この質問が来た。僕は焦り部屋の中をグルグル歩き回っていると、携帯の着信音が部屋に鳴り響く。
その着信音で、それが安奈からだとわかった。
最近、着信音の設定の仕方を覚えたのだ。恐る恐るメールを見ると、
『ちなみに私は泳げないんだけど……。
海は別に泳ぐためにあるわけじゃないもんね』
以外だった。まさか、安奈も泳げないなんて……。
でも、少し安心した。泳がなくてすみそうだったからだ。
『恥ずかしながら、僕もカナヅチなんだ。
本当なら、泳げたほうが良いんだろうけど……』
『そうなんだ。でも、そんなの関係ないよ。
人には得意、不得意があるのよ。だから、恥じる事は無いの。
もっと、前向きに考えようよ』
と、安奈は僕を励ましてくれた。何だかとても嬉しかった。
この日は中々眠る事が出来なかった。明日が楽しみだ。