第十二通 再会
補習も終わり夏休みも随分過ぎていた。一向に安奈からのメールは来ない。
僕は特にする事も無く、部屋のベッドに横になって漫画を読んでいた。
安奈からのメールが途絶えてから、携帯の着信音が鳴り響く事がなく静かだった。
僕は安奈の事は忘れられなかったが、忘れようと努力していた。
部屋の漫画は何度も読んだ。だから、もう読む気がしない。
「新しい漫画でも買うか……」
僕はそう言って、財布を持って家を出た。家から本屋まではさほど遠くは無い。だから僕は歩いて本屋に向った。
本屋は沢山の人が立ち読みをしていた。そんな人々の間を抜けて、読みたい漫画を探した。
面白そうな漫画を何冊かまとめて買った。しかし、よくお金が足りたものだ。
本屋を出てすぐだ。忘れようとしても忘れられない安奈の声が耳に届いた。
「あっ! マサ!」
その声のする方に顔をやると、彼女が笑みを浮かべながら僕に駆け寄る。
白のブラウスの下に黒のシャツを着ていた。青いミニスカートが風で揺れた。
「安奈……」
僕は彼女の顔を直視できなかった。まぁ、それもそのはずだろう。暫く、メールのやり取りもしていなかったし、嫌われていると思っていたのだから……。
そんな僕に、彼女は申し訳なさそうな表情で、両手を合わせて言った。
「ごめん! 私、携帯無くしちゃって……。
買い換えたんだけど、マサのアドレス分からなくて……」
「な…何だ。そうだったのか……」
僕はホッとしたと同時に、表情が明るくなった。すぐに携帯を出して安奈にアドレスを教えた。
安奈は愛らしく微笑みながら僕に言った。
「これで、またメールできるね」
この言葉を聞いた途端、とても嬉しくなった。
僕は安奈と別かれて、浮かれながら家路についた。
家についても、僕はずっと浮かれていた。
買って来た漫画をそのままにして、彼女からのメールを待った。