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第九十九回 オカルトとロウソク

 言い伝えにある。ひとりで寺にこもり、百本のロウソクに炎を灯す。そして丑三つ時から開始して、怪談を語る。ひとつ語り終えるたびに、ひとつのロウソクを消す。そして朝日が昇るまでに百の怪談を語り終えたとしたら、死者と邂逅できるという。いわば一種の呪的儀礼といえよう。

 その名も超恐怖百怪談。


 そして今は早朝。俺の友人が昨晩から、その超恐怖百怪談にチャレンジしていたのだ。果たして彼は何者かと邂逅を果たしたのだろうか。

 お堂の戸が、ガラリと開く。中から友人が倒れ込むように出てきた。

「おい、大丈夫か!」

 駆け寄ると、彼は魂をなくした抜け殻のように疲労困憊し、震えが止まらない。

 ふと、お堂の中を見ると一本だけ火が点いたままになっているロウソクがある。どうしてだ。怪談を終えたのなら、ロウソクは全て消えているはずなのに。

 もしかしてあのロウソクは、死の国からもたらされた、幻の百一本目だとでもいうのだろうか。

「助けて……助けてくれ……」

「一体なにがあったんだ。死者とやらに会ったのか!?」

 彼は恐怖に表情を引きつらせつつ、ぽつぽつと語った。


 怪談が一話につき三分かかるとして、百話で三百分、つまり五時間。怪談の開始は午前三時。もうこの段階で「朝日が昇るまでに語り終える」という条件が無理ゲーだった。だが気付いた時には、とっくに怪談の途中。

 それでも自分は頑張った。頑張って九十九話まで語った。そこでネタが尽きた。もう無理。脳機能が停止したかのうに、何も思いつかない。焦って焦って、気付いたらとっくに朝日は昇っている。

 つまり徒労に継ぐ徒労だけで、怪談は失敗したのだ。

「もう疲れた! もう二度とやらない!」

「ですよねー」

 というか、この超恐怖百怪談。やれる人間がいたとしたら、そっちの方が恐いわ。

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