第九十五回 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
「わたしは恥のない人生を送りたいのです。どうやれば恥のない人生を送ることができるのでしょうか」
ある時、弟子は師匠に尋ねた。
師は少し考えてから答える。
「一時の恥をかかない方法ならある。他人に質問しないことだよ」
「なるほど。確かに、誰かに質問するというのは、すなわち自らの無知を晒すに等しい行為ですしね」
「その通り。ゆえに、聞くは一時の恥というのだ」
ここまでの話を聞いて突然、弟子は大笑いをしだした。
「はっはっは。師よ、ありがとうございます!」
「どっ、どうした。何が面白い?」
「聞くは一時の恥。なるほど。この言葉さえ知ってしまえば、もうアンタの教えなんて、質問などという恥ずかしい思いをしてまで、聞く必要はない。もう貴方から教わるべきは、全て学んだ。わたしはココを卒業させてもらいますよ!」
まくし立てるだけまくし立てて、弟子は笑いながら勝手に出て行ってしまった。
唖然としたまま、師匠は弟子の後ろ姿を見送る。そして、姿が見えなくなってから、深い溜息を吐いた。
「やれやれ、聞くは一時の恥なのは確かなのだが。慌て者め、この言葉には続きがあるというのに。だが、聞かぬは一生の恥。あやつめ……きっと、いつか、どこかで、こっぴどく恥ずかしい思いをすることになるのだろうなあ」