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第八十回 勇者と中学生

 ここは市立勇者中学校。素質を持った少年少女を、未来の勇者として育成する中学校である。

 そこへ校舎裏から忍び込む影があった。その影は、ゴミ箱を焼却炉へ運ぶ途中の、生徒に発見されてしまった。

「あれっ、王様じゃないですか?」

「ホッホッホ。さすがは勇中(市立勇者中学校の略称)の生徒。見つかってしもうたわい」

 中学校に忍び込んでいたのは、優雅なガウンを羽織、頭に王冠、手には錫杖。白いヒゲを豊かにたくわえた国王様だった。


「王様なんですから、正門から堂々と入ってくださいよ~」

「すまんすまん。ちと特別な用事があってな。そういう君は、額には炎神の紋様と、グリフォンのレリーフを彫ってある、それは聖剣ナイツカリバー。ということは、大騎士ビルジキール家の跡取り息子クンじゃな」

「すごい! さすがは王様ですね。何でも御存知だ」

 えへんと胸を張る王様。


「ところで、こんな裏口からコソコソと。どんな御用でしょう?」

「いやな。勇中に此度、勇者の中の勇者と呼ばれている者がいるそうではないか。ワシも国王として、未来の平和を担うべき勇者の玉子を見たくなったのじゃよ」

 今から勇者に会った時のためなのだろう。「おお情けない」とか「次のレベルには経験値が足りないぞ」などと、ひとりごとで練習する王様は浮かれがちだ。

 勇者の中の勇者とは誰なのか。生徒はしばらく考えていたが、思いつくところがあったらしい。

「もしかして……」

「おっと、待ってくれ。当ててみようじゃないか」

 王様は考える。


「勇者の中の勇者。それは伝説の竜の血を引くという、竜戦士のことではないかね?」

「いいえ違うと思います」

「では大魔道士の知恵を秘法により継承した上、四大精霊王の祝福を受けたという賢者」

「いいえ違います」

「ならば若くして退魔剣技の奥義全てを修得した若者がいると聞くぞ」

「違います」


 王様は困ってしまった。

「どうやら、元から名のあるタイプの勇者ではないようじゃな」

「王様の仰る方は恐らく、二年ひまわり組の田中武麗刃[ぶれいば]クンのことだと思うんですが……」

「たっ、田中ブレイバー! なんとも勇者に相応しい名前じゃ」

 どうやらこの名前は王様のツボにハマったらしい。

「田中クンは何か特殊な能力を持っているわけじゃないんですよ」

「特殊な能力を持たないのに、勇者の中の勇者……だっ、だとしたら、幼なじみの少女を帝国に攫われたので、勇気だけで立ち向かうとか、そんなタイプかね!」

 どうやら、こういうタイプの勇者が王様のツボらしい。


「実際に会ってみれば分かりますよ。ちょっと待っててください。田中クンを呼んできますから」

 生徒はゴミ箱を置いて、走り去ってしまった。王様はワクワクしながら待つこと五分ほど。

「王様ー! 田中クンを呼んできました」

 さっきの生徒がつれてきたのは、中学生にしてはえらく背の高い……というより、どう見ても大人の男性だった。

「どうも、自分が田中武麗刃です。年は四十三歳です」

「その年で中学校に通うとか、どんだけ勇者だよ!?」

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