第七十回 妖怪・猫又
娘は家族にしてペットの愛猫ミケをつつきながら、台所で料理中の母に話しかけた。
「ねー、ミケって私が小さい頃からいるよねー?」
「ミケなら、アンタが生まれる前からいるわよ。それがどうしたの」
「いやさぁ。ミケって何歳なのかと思って」
ミケはかなりの老猫だ。ずっと寝てばかりで、娘がつっついても、動じすらしない貫禄を見せている。
母は水仕事をした手を拭きながら、居間に戻る。
「そういえば、そうね。確かアンタが生まれる前の……いやお父さんと結婚する前からいたっけ。そうそう。ワタシがアンタと同じ頃には、もうミケはいたわ」
「ちょっと待って待って。さっきテレビで、猫の平均寿命は十六歳くらいで。世界最高でも三十何歳だっていってたのよ」
「今度こそ思い出した。ワタシが小さい頃には、もうミケはいた……気がする」
「じゃあミケって実は世界最高齢クラス!?」
母は考え込むが結果が出ない。そこで昔のアルバムを持ってくることにした。写真には娘にそっくりな顔をした、年の頃では同じくらいの母が、ミケと一緒に写っている。ミケは今と変わらず老猫のままだった。
更に遡り、母の幼い頃の写真を見る。そこにも老猫のままのミケが写っていた。
「信じらんない。ミケって一体、何歳なのよ?」
「もしかして本当にミケってギネスブックに載るくらいの長生き猫なのかもしれないわね」
と、そこへお婆ちゃんが登場。
「ミケの歳かい? ミケだったらアタシが小さい娘だった頃からいたわねえ」
「「ちょっと待って!?」」
母と娘の叫びは同時にハモった。
七年以上も長生きした猫は、化けて猫又になるという。その後もしばらく家族中を巻き込んでの論争は続いた。だが意見は分かれに分かれて結局、ミケは正体の尻尾も掴ませてくれなかった。
どうやらウチのミケは既に、尻尾の分かれた猫又の類であるらしく、私たちを化かしているに違いなかった。




