第六十八回 先輩と虚無感
サッカー部の練習終了後。宇城はキャプテンの御崎に相談を持ちかけた。
「ん? 何か問題か?」
「いえ……面倒を見るようにっていわれてた、河原のことというか」
「どうした。河原がいうこと聞かないのか? にしては、お前も良く一年の面倒を見れてるように思ったんだけど」
「違います。河原はちゃんと指示通りに動いてくれて、素直な良い奴ですよ」
「だったら」
「問題は俺なんです。河原は本当に凄くて、俺がいなくたっても最初から何でも出来てて。じゃあ俺っていなくても構わないじゃんって」
「……」
「で、この一年がんばってたのは無駄だったのかなと」
重苦しく沈み込む宇城を
「バッカじゃねーの!?」
御崎は一喝した。
「河原は確かに才能あっかもしんねーけどさ。でも宇城の方が先にやってんのも確かなんだよ。追いつかれそうだってんなら、宇城はもっとがんばって追い抜き返せばいーじゃねぇか」
うつむいていた宇城はハッと顔を上げる。
「俺に……できますかね?」
「やりゃーできるさ」
と御崎は笑ってみせた。
「さっ、帰るぞ」
「やっぱ御崎先輩は凄いっす。悩みとか全部お見通しで」
「凄くねーし」
御崎はスポーツバッグを背負い込むと、照れくさそうに言い捨てた。
「後輩に追い抜かれるんじゃないか、ってその気持ちもさ。俺の方がオメーより一年先輩だったってだけの話さ」