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第六十三回 他人の悪を能く見る者は、己が悪これを見ず

 日本中を恐怖に突き落とした有名映画監督連続殺人だったが、捜査は完全に行き詰まってしまった。関係者をどんなに警護しても、殺されてしまう。しかも犯人の手口は完璧で、全く証拠が残っていない。

 まさに殺人の天才としかいえない手口だった。

 そんな折、警察を嘲笑うかのように、犯人からの脅迫状が送られてきた。封筒の中には手紙と、DVDが入っている。

 手紙にはこうあった。


「私は現在の腐った映画界を憂慮する者だ。最近は民衆におもねった低俗な作品ばかり。そのような者がいる限り、私の天誅が終わることはないだろう。ちなみに同封したDVDには我が情熱を込めた作品が入っている。現在の下らぬ映画界に一石を投じる傑作となるだろう」


 捜査陣は沸き立った。周到な犯人のことだ。その「作品」とやらに証拠を残している可能性は、限りなく少ない。だが何か。何かの手がかりでもあるのではないか。

 斯くして、本庁で大々的に試聴会が行われることとなった。警察関係者で希望するのであれば、誰でも参加可能。捜査に関わる者から、映画ファンの警官まで。百人以上が大会議場につめかけた。

 これだけ多くの目が集中するのだ。きっと何か捜査の糸口が見つかるに違いない。遂に幕は上がった……。


 ……そして幕は下りる。犯人が撮影したという、その映画の内容。我々は、あまりの残虐な事実を突きつけられた結果となる。映画から透けて見えた、犯人の身勝手さに、視聴していた者たちは悉く怒り狂った。

「つっっっ、つまらねえぇぇぇ」

「あの主人公がキスしてハッピーエンドとか、納得できねー」

「しょーもねぇぇぇ」

「絶対にコレ、犯人は主人公に自己投影してるだろ」

「御都合主義うぜえええ」

「待ってくれよー、殺された黒川監督って俺ファンだったんだぜー」

「うわあああ。白山監督ぅぅぅ」

「絶対に許さない。絶対にだ!」

「こんな犯人に殺されたとか、被害者も浮かばれないわー」

「貴重な二時間半を返せ、返せよぅ」


 うん。面白い映画を撮れるのなら、最初からその「低俗な映画界」なんて憎むことはないのであって。いや、そもそも連続殺人事件なんて起こすワガママな犯人が、多くの人に喜んでもらえる映画を撮るのが無理という話で。

「殺人やっている暇があるんなら、映画の勉強しろよぉぉぉ」

 ブーイングはまだ続いている。

 ともかく捜査陣の士気は高まった。犯人逮捕に向けて一致団結し、がんばれるといーなー。

 と、私は寝ぼけ眼を擦りながら思った。

 いやー。良く皆、こんな映画を最後まで見られたよねー。私なんて開始五分で即、寝落ちしちゃったよ。あっはっは。

 気分転換に名言から短編を作ってみました。足利尊氏の言葉だそうです。

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