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第五十二回 快楽と体毛
ここは床屋。ひとりの客が理容椅子に深く座っていた。背後では、床屋が忙しなく散髪の準備をしている。
客は目を閉じたまま、床屋に語り出した。
「不思議ですよね。どうして散髪されていると、フワ~ッと気持ち良くなって、眠くなるんでしょ?」
すると床屋は熱いお絞りを冷ましながら、あることに気付く。
「ははあ、お客さん。夜がずっと寝不足なんですね」
「えっ。どうして分かるんです?」
「だって、お客さん。ウチにしょっちゅう来てくれてますから」
といって床屋は、もう切れる長さの髪がなくなった頭に、お絞りを乗せた。