第三十六回 図書館と旅
魔境異境を越えた更に先。無数の多元世界をも超越した先に、そこはあるという。名は超時空無限大図書館。全宇宙のあらゆる英知を収蔵した図書館だ。
だが誰でもそこへ行けるというわけではない。図書館までの遙かな遠い道程自体が、知に相応しい賢者を選別する、一種の試練となっている。ゆえに図書館へ辿り着けるのは、ごく一部の人間のみ。多くの探求者が図書館を求めて、何十年も何百年もかけて彷徨い。しかし大半が道中で命を落としていた。
だがここに、とうとう超時空無限大図書館へ辿り着いた男がひとり。
男は息を切らせながら、重い扉を開いた。すると中は書の詰まった本棚が並ぶ空間。広くは、地平線の彼方まで。高くは、雲を貫いて。深くは、闇の底まで。延々と本棚が続いている。
間違いない。ここが超時空無限大図書館だ。すると奥から正装の老紳士がやってきた。紳士は男に、うやうやしく礼をする。
「ようこそ超時空無限大図書館へ。わたくしは当図書館の司書であります。お望みの本があれば、申しつけください。どのような本でも探してきましょう。
例えば、どのような病をも治す薬の作り方。全人類を原罪から解放する救済の光。読めば誰でも感動間違いなし、史上最高の娯楽物語。銀河をも破壊する兵器の設計図。星々すら創世する、宇宙開闢の真理。
願いさえすれば、貴方は神にも悪魔にもなれましょう。さあ、どのような本をお望みで?」
男は少し考えると、鼻の頭をポリポリとかいて、恥ずかしそうに小声でいった。
「とりあえず、郷里までの地図はあるかな? 帰り道が分からなくなっちゃって」




