第二十四回 死とハダカ
あの世へ向かう旅路の途中。三途の川には亡者の衣服を剥ぎ取る、奪衣婆という老婆がいるという。
そして、ひとりの奪衣婆が賽の河原に積んだ石に座り、溜息をついていた。そこへ他の奪衣婆がやって来る。
「おーい、ダツ江。元気しちょるかーい」
「ダツ美じゃないかい。どうしたんじゃ、暇そうにして」
ダツ美もよっこらしょと、手頃な石に腰掛ける。
「そりゃー暇にもなるじゃろー。不景気にも程があるわいな」
「まあな。聞いたかい。もしかして奪衣婆のお役目が事業仕分けで、下手すっとワシらリストラかもしれんと」
「聞いた聞いた。全く、最近のモンは伝統の重みっちゅうのを分かっておらんからの」
「それもこれも、あんのおかしな新興宗教が流行ってからじゃ……」
現在、奪衣婆の仕事は急速に失われつつあった。コトは地上で急速に勢力を広めつつある新興宗教で行われている、特殊な葬儀法にある。人は皆、裸で産まれたのだから、死ぬ時も全裸であるべきだ。という教義により行われている、「全裸葬」が広まってしまったのだ。
結果、冥府は全裸の亡者で溢れた。仕方なく閻魔大王は裸で死んだ者も、無条件で三途の川を渡すよう特例を公布。奪衣婆は仕事をなくしてしまったのである。
「そんでの、ワシがここまで来たのは、ニュースがあるからなんじゃ」
「ほうほう」
「今度、その新興宗教の教祖が死んだんじゃと」
「ざまあ」
「んでな、それに関して閻魔様がわざわざ地上に赴いて、人間どもに全裸葬をやめるよう訴えたんだと」
「閻魔様、マジでグッジョブ」
「ほんでその教祖の男。もうすぐ、ここへ来るはずじゃ。もちろん服を着ての」
との矢先、パラリラポロ~ンと、電子音が鳴った。誰か亡者が来たのだ。間違いない。コイツこそ話題に出た男、久しぶりの服を着た亡者だ。
「キタキタキター!」
「よっしゃ、じゃあダツ江。仕事頑張ってこいよ」
おうよ、と元気よく返事し。奪衣婆のダツ江は持ち場についた。しばらくして、やってくる亡者。
「聞きましたよ……どうやら私の教えで、あなた方に迷惑をかけていたようですね。申し訳ない。だから! さあ思う存分、私の服を奪ってください! さあ! さあ!」
そうアピールする亡者は、額につけるべき小さな三角巾を股間につけていた。少し、こぼれている。
「余計にやりにくいわ!」