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第十八回 猫と爆弾と廃墟

 事件は私が「国境のなさげな医師団」の一員として、紛争の絶えないアフガニスニャン国へ入った時に起こった。

 ある日、大きな抗争で入院患者が多く運ばれ、病院には収容できなくなったのだ。我々は人のいなくなったビルを少しの間、無断で仮住まいさせてもらうことにした。そうと決まれば早速、私を含めた何人かで中の様子を探ることとなる。

 ところが一室にテロリストのトラップが仕掛けてあったのだ。見えないよう張ってあったワイヤーを、私はつま先で引っ張ってしまう。途端、導火線が点火、黒くて丸い爆弾へと種火が走った。

 にしても黒くて丸い、導火線のついた爆弾って、また古風な。カートゥーンでもそんな爆弾は見ないぞ。心のどこかで考えつつも、私は叫んだ。

「しまった、爆発するぞ、逃げろ!」

 私はもう間に合わない。死を覚悟する。ところが導火線の火が爆弾に辿り着くと……

 ぽんっ!

「にゃにゃにゃにゃーん」

 破裂音と共に中からくす玉のように、何十匹もの子猫たちが飛び出してきた。なんだこの爆弾。

 かくして一命を取り留めた私だったが。許せないのは、こんな小さい爆弾状の球体にたくさんの子猫をつめこんだ、テロリストだ。何のイタズラか知らないが、子猫たちも可哀想に。

 私は動物愛護の精神により、その中の一匹を引き取り育てることにした。もちろん本国でも私たちは一緒だ。ママンも歓迎してくれた。やがて彼女は血統書つきの紳士とお見合いし、お腹が大きくなってくる。そう、彼女はメス猫だったのだ。

 にしても疑問が残る。どうやれば、あんな小さな球体に多くの猫を、しかも元気に生きたまま押し込めたのだろうか。あんな狭い場所に長期間詰め込まれれば、子猫でなくとも衰弱し死んでしまうだろうに。そもそも製法もだが、ならば工場もあるのだろうか。

 そんな疑問とは関係なく、彼女に出産の瞬間がやってきた。ところがテーブルの上に産み落とされたのは、子猫ではなく……ゴトンッ! と重い音が響く。導火線のついた、黒くて丸い爆弾だった。

 なるほど、この猫はそもそも爆弾から産まれる種族だったのか。ひとりでに導火線が点火する。

「しまった、爆発するぞ、逃げろ!」


 それからは黙示録のような光景が繰り広げられた。

 大量発生した子猫を処分するため、遂にNAVYが派遣されるも、つぶらなおめめに、ふわふわ毛並み、その上に肉球でぷにぷにされては敵わない。プレジデントは軍の撤退を決定。町の閉鎖を命じる。我が故郷は猫に人が追いやられて、ゴーストタウンと化したのだ。

 この手記は疎開先で書いている。全ては戦争という狂気が生んだ悲劇なのだろう。我々は忘れてはならない。だから、今度の子猫こそ上手に育てるよ!?

 こっそり一匹だけ隠してつれてきた子猫へ頬ずりする。ああっ、それにしてもニャンニャンは可愛いなぁぁぁ。おや、何やらお腹からチックタックという時計のような音が……

「しまった! 時限式か!?」

 小説書き仲間のちゅーん君が「猫・爆弾・廃墟」という三題噺をやっているのを見て、ボクも試しにやってみました。

 ところが「猫と爆弾」で浮かぶイメージが「くす玉のように数十匹の猫がにゃーんと飛び出す爆弾」というものしかなく、あきらめかけていたものの。じゃあ「くす玉(略)」を元ネタに作品化すれば良いじゃない! と発想転換し、今に至ります。

 やりゃあ書けるもんだ。


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