第十四回 入浴時にバスタオルを用意し忘れた
「たいへん、たいへん」
カーチャンは慌てていた。その前にタカシが現れる。
「あら? もうお風呂から出たのね、タカシ」
「どうしたんだい、カーチャン」
「ごめんね、カーチャンったらバスタオルを洗濯して取り込んだ後、風呂場へ持って行くの忘れてたの。脱衣所にバスタオル、一枚もなかったでしょう?」
「そうだったっけ。でも問題なかったよ」
「まあタカシったら、どうやら他にタオルがあったみたいね」
「いいやカーチャン。オイラの方は、そもそも風呂から出た後に体を拭くという発想自体を忘れていたよ!」
すんごい自慢気な笑顔でサムズアップするタカシ。
髪の毛からは水滴がしたたり落ち、パジャマはぐしょ濡れ、廊下には水たまりが出来ていた。
強く握りしめた拳を、ゆっくりと振り上げるカーチャン。
「タカシィィィッッッ! 歯ァ食いしばりな!」
「うあああ、御免よカーチャン!?」
小説書き仲間の紅月赤哉さんによる壮絶な無茶振りお題、第二回目になります。
お題を出されたのが昨晩。翌日の仕事中にプロットを考えて。仮眠後に執筆。UPしました。……という超即興ショートショートになります。