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第十回 性欲と雨季

 それは山口美保が村の新任教師として赴任してから数ヶ月目のことだった。

 村は山間の僻地ゆえに戸数こそ少ないものの、人口における子供の割合は不思議なくらいに多い。そのため活気があり、過疎独特のさみしさはなかった。

 学校も全学年合同で授業を行うとはいえ、むしろ生徒たちとの深い関わり合いが持てる。山口美保はこの村での生活におおむね満足だった。

 が、ある日、不意に疑問を抱く。

 出席名簿を眺めていた時のことだ。気付いてしまう。村の子供たちの誕生日が、異常に偏っているのだ。誰も彼も、3月から4月の間にに生まれている。それも全学年においてだ。

 一般に妊娠期間というのは十月十日とか260日だとかいわれている。ということは逆算すると、6月から7月の間に村で何かが起こっているということになる。いったい、この村で何が起こっているというのか。数年後、その答えを山口美保はその身で知ることとなる。


 つまりは、何ということはない。複雑な形状をした周囲の山々から影響を受け、この村は梅雨時の雨量が凄かったのだ。麓の繁華街へ行くには自動車でも数時間かかる。村に娯楽はない。となると家に引き籠もった人間がすることなんて、ナニしかないわけで。

 というわけで梅雨時に種付けされた子供たちが、春先に生まれるという……。

「まあ分かってしまえば、どうという話でもないんだけどね」

 美保は家の中から梅雨空を眺めつつ思った。胸には赤ん坊を抱いている。傍らには夫となった村の青年が、長男と遊んでいる。

 旧姓・山口美保はこの村での生活におおむね満足だった。

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