第1話 二人だけだね。
タワー。青色の空の中に隠れながら浮かんでいる大きな白いたまごみたいな翼の方舟。
二人だけだね。
空を見上げると吸い込まれそうな澄んだ青色が永遠と広がってた。ずっとずっと、果てしなく広がってる青色の空はまるで世界で一番美しい透明な海のようだとタワーは思った。
猫みたいな大きなつり目の攻撃的な強気のタワーの黒色の瞳の中には、空の青色が鏡のように映り込んでいる。
穏やかで優しい風がタワーの長くて美しい黒髪を撫でるように揺らしている。
とても静かで、小さくて形のいいタワーの耳には風の音が聞こえるだけで、あとはなんの音も聞こえない。
美しいくて、優しくて、静かなところ。
なんだかここは、まるで天国みたいなところだなって思って、(空の高いところにあるし)くすっとタワーは子供みたいな顔で笑った。
タワーはいま、真っ白でとっても大きな、大きなちょっと変わった変な船の上にいる。
まるで大きなたまごみたいな形をしている船だった。
赤色のりぼんの短いスカートの白い清楚な学生服を着ていて、平べったい船の上のところに綺麗な足を片方だけ伸ばして座っていた。
船といってもタワーがいる船は海に浮かんでいるわけじゃなくて、『空に浮かんでいる不思議な船』だった。
その不思議な空に浮かんでいる真っ白で大きなたまごみたいな船は『翼の方舟』と言う名前で呼ばれていた。
実際に翼の方舟の名前の通りに翼の方舟には大きな白い鳥の翼が船の両脇から生えていた。
この世界が終わるときに命をのせて空を飛びながら、再び世界を再生させるために緑の種を蒔き、空気や水や大地を浄化させて、方舟に乗っていた命を世界に帰すための神様の船。
それが『神秘』と呼ばれる『神様の七つの奇跡の一つ』翼の方舟だった。
神話の中で語られる翼の方舟は見つけることは誰にもできないと言われていた。世界が終わるときにその隠されている姿を方舟が『自らの意思』で自然とあらわにするまでの間、誰にも見つけることはできないとずっと思われていたのだ。
そんな神秘の一つの翼の方舟をタワーは見つけた。(それはまさに千年に一度の大発見だった)そして翼の方舟に乗り込んだのは良いのだけど、翼の方舟に乗ると、今度は『翼の方舟の外に出ることができなくなってしまったのだ』。
翼の方舟はしゃぼん玉のような丸い透明な殻のようなもので、どうやらその全体を包み込まれているみたいだった。
入るときはそんなものがあるなんて全然わからなかったし、なんの抵抗もなく、翼の方舟に乗ることができたのだけど、外に出ようとするといつのまにか目に見えないしゃぼんだまみたいな丸い透明な殻があって、その殻が邪魔をして、外に出られなくなってしまった。
つまりタワーは翼の方舟の中に閉じ込められてしまったのだ。(空はとっても自由に見えるのに)
なのでタワーは仕方なくこうしてぼんやりと翼の方舟の上のところに座って、青色の空を眺めているのだった。
「だめだよ。やっぱりどこにも出口はないみたいだ」
一人だけの静かなタワーの世界にそんな子供っぽい少年の声が聞こえてきた。
タワーが声のしたほうにその猫みたいな瞳を向けるとそこには一人の黒髪の少年がいた。(いつも優しい顔で笑っている少年は、こんなときでもやっぱり優しい顔で笑っていた)




