最終話 秘密の重みと喜び
誰にも話せない秘密を抱えることは、時には孤独を感じさせます。特に夫が「最近、なんだか輝いて見える」と言ってくれた時、すべてを打ち明けたい衝動に駆られます。でも、話せばすべてを忘れてしまう——手紙に書かれた条件を思い出し、私は黙っています。
それでも、この秘密は私に不思議な自信を与えてくれました。37歳の専業主婦としての日常に、14歳の魔法使いルミとしての冒険が重なる——二つの人生が、互いを豊かにしているような気がします。
今日も、息子が友達の家へ遊びに行き、夫がゴルフに出かけた午後。私は鍵を手に取り、光の扉を開けます。
「行ってきます、ヴェルディアへ」
小声で呟き、片足を異世界へ踏み入れます。セシルが新しい魔法を教えてくれる約束の日です。現実世界では水平雪枝、異世界ではルミ——この二つの名前、二つの人生が、私という一人の人間を形作っているのです。
鍵をしまい、リビングに戻ると、そこは相変わらずの我が家。窓の外では洗濯物が風に揺れ、台所には夕食の準備が半分終わった野菜が置いてあります。異世界の魔法も素敵ですが、この日常こそが、私の最も大切な現実なのだと、改めて感じます。
ただ一つ願うことがあります。このバランスが、いつまでも続きますように——そして、もし可能なら、いつか夫と息子にも、ヴェルディアの青空を見せてあげたいです。でも、それはきっと叶わない願いなのでしょう。
それでもいい。この秘密の鍵が、平凡だった日常にほんの少しの魔法をくれたこと——それだけで、私は幸せなのです。




