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二つの世界の狭間で
夜、ルミはイセル湖のほとりに座り、水面に映る月を見つめた。水の精霊たちがそっと近づき、彼女の周りを漂う。
「迷っているの?」小さな精霊が囁いた。
ルミはうなずいた。
精霊はきらめいた。「水は形を変えても、その本質は変わらない。あなたも同じよ」
ルミははっとした。彼女は水平雪枝でもあり、ルミでもある。二つの世界、二つの人生——それは対立するものではなく、一つの川の二つの流れのようなものかもしれない。
家に帰ると、セシルが温かい紅茶を用意して待っていた。
「急がなくていいのよ」セシルは優しく言った。「魔法も人生も、自分のペースで進めばいい。あなたには時間がある」
ルミはうなずき、紅茶の湯気を見つめた。湯気がゆっくりと空中で小さな雪の結晶に変わっていく——無意識に魔法を使っていた。
彼女は微笑んだ。魔法学院に行くかどうかはまだわからない。でも、一つだけ確かなことがあった。彼女はもう、ただの主婦ではなかった。水と氷の魔法を使う少女でもあり、家族を愛する母親でもあり、二つの世界を生きる唯一無二の存在だった。
窓の外では、イセル湖が月明かりに青く輝いていた。まるで、もう一つの世界への入り口のように。




