彼女との出会い
「一ノ瀬くんって、授業中、ずっと外眺めてるよね」
昼休み、不意に声をかけられた。振り向くと、そこに彼女がいた。
「……なんで、俺の名前」
「ホームルームで呼ばれてたよ。誰とも話してないから、なんとなく覚えてた」
そう言って、俺の隣の席に腰を下ろす。
「ここ、誰も来ないの?」
「……誰も来たがらないだけ」
「じゃあ、今からは私の特等席ってことで」
その言葉に俺は心の奥底にある何かがまた少しだけ音を立てた。
それから彼女は、当たり前のように俺の隣に来るようになった。
昼休み、帰り道、本屋。少しずつ、確実に、俺の中に入り込んできた。
「もしさ、人って…限られた時間しか生きられないとしたら、一ノ瀬くんはどうする?」
「・・・そんなの、悲しいだけだ」
「でも、誰かの心に残るって、ちゃんと“生きた証”だと思うの」
彼女の笑顔が、少しだけ、影を帯びて見えた。
第3章 ひと夏の恋
夏休みに入った日、俺たちは付き合い始めた。
同じ時間を共有する中でお互いに一緒にいたいと思うようになり、付き合うのは自然の流れだった。
学校の帰り道、花火大会、深夜の長電話。
遥といる時間は全て輝いていた。
でも、遥の瞳の奥に、どこか「焦り」のようなものを感じるようになった。
ある日、彼女がぽつりと言った。
「…もし、私がいなくなったら、蓮くんはどうする?」
「何言ってるんだよ」
「……なんでもない」
笑ってごまかすその声が、かすかに震えていて、少し元気がないように思えた。
だか、俺は見ないふりをした。
・・・怖かった、なにも変わらない日々が突然壊れるような気がして。