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あなたに感謝していたいの  作者: 遠藤 敦子
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 翌朝真白ちゃんが私を見るなり、こう声をかけてきた。

「歌乃ちゃん顔色悪いけど大丈夫? 昨日寝られた?」

「なんとか……」

と私は答えたけれど、本当は一睡もできていない。次の瞬間、私はふらついて倒れてしまった。

 次に目を覚ましたとき、私がいたのは保健室のベッドだ。保健室の先生にも

「古澤さん、疲れてない? 何か悩みとかあるの?」

と言われたけれど、私は大丈夫ですと返す。

「大丈夫そうには見えないけど……」

と先生が言うので、私は正直にここ数日考えていたことを泣きながら打ち明けた。

「私大阪から転校してきたんですけど、母が殺人事件を起こして捕まって……。殺人犯の娘だっていじめられてました。男性とうまくいかなくて自暴自棄になった母から『あんたなんかいてもいなくても何にも変わらない』って言われて、私いる意味あるのかなって……。いまは良い友達もできたんですけど、みんな離れていくんじゃないかって思うと不安で。もう母に言われたことがトラウマになってると思います」

先生は泣く私にティッシュをくれ、

「古澤さん、今まで辛かったね……。お母さんにそう言われたからって、古澤さんがいてもいなくても良いってことは絶対にないのよ」

と言ってくれる。


 その頃ベッドのカーテンが開き、侑也が顔を覗かせた。

「悪い、全部聞いてしまった……」

「え、侑也? どうしてここに?」

私は驚いてしまう。侑也は私の前にしゃがみ、そのまま手を握る。そして

「古澤にそんな重い過去があったなんて知らなかった……。でもこっちにはミドリおばちゃんも飯村も岸本も俺もいるし、お前は決して1人じゃない。だからもう、これ以上1人で泣くな。俺は友達としてでもいいから、お前のそばにいて守りたいんだ」

と言って私を抱きしめた。侑也の腕の中で私は安心して子どものように泣きじゃくる。


 放課後、私と侑也はバス停まで歩いて帰る。私が

「ごめん、あんな見苦しいとこ侑也に見せちゃって……」

と謝ると、侑也は

「いいよいいよ、気にするなって」

と笑っていた。雨上がりで空には虹がかかっていた。

「あ、侑也見て、虹出てる!」

私が虹を指さして言うと、侑也から

「本当だ、綺麗だな」

と返ってくる。雨上がりの空と虹は私の心の中を表してくれている気がした。

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