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あなたに感謝していたいの  作者: 遠藤 敦子
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 博多駅に着き、駅でおばあちゃんと合流する。博多駅でおばあちゃんの姿を見た瞬間、私は泣きながらおばあちゃんに抱きついた。

「歌乃、よく来てくれたね……!」

と、おばあちゃんも泣いていた。それからふるさわ菓子店に向かい、一旦荷物を預ける。親権者変更手続きや高校編入試験などで慌ただしくしていたけれど、試験に合格して編入先の高校も決まった。

 転校初日、私はおばあちゃんに送ってもらい早めに学校に到着する。職員室で担任の中島(なかしま)先生が暖かく出迎えてくれ、高校についていろいろなことを説明してくださった。これからこの学校に生徒になるんだなと実感すると同時に、クラスメイトはどんなひとがいるかと緊張もしている。

 ホームルーム開始に伴い、私は中島先生に教室まで案内してもらった。しばらく外で待っていてほしいとのことなので、待機する。中島先生の

「古澤さん、どうぞ入って来てください」

という一言で、私は入室した。


「はじめまして、古澤歌乃です。大阪から来ました。初日で緊張してるんですけど、よろしくお願いします」

 私は初対面のクラスメイト全員の前で挨拶する。緊張していたのもあり、声が上擦っていたかと思う。それでも前の学校とは違い、暖かく迎えてくれているのがわかった。

「みんな仲良くしてやれよ。それじゃあ古澤さんは、水谷(みずたに)の隣に座ってもらおうか」

中島先生の指示により、私は水谷侑也(みずたにゆうや)の隣の席に座った。水谷くんはおとなしそうな男子だ。一言だけ自己紹介を交わし、私はまだ教科書が届いていなかったので何度か水谷くんに見せてもらった。



 放課後バス停でバスを待っていると、水谷くんにばったり遭遇する。少しだけ立ち話をしたけれど、水谷くんに

「古澤さー、なんでこの時期に転校してきた?」

と訊かれた。悪意はないとわかっているけれど、答えにくい質問なので

「お父さんは中2の時に病死して、お母さんは事件起こして捕まって……。それでおばあちゃんと暮らすことになったの」

とだけ答えておく。すると水谷くんは

「あ、ごめん、こんなこと訊いて……。古澤も辛い過去があったんだな……」

と謝った。私は気にしないでと笑って返す。


 翌日、私は外の空気を吸おうと昼休みに屋上に向かった。屋上では水谷くんがギターを弾いている。

「古澤、お前なんでこんなとこに……」

水谷くんは私にギターを弾いているのを見られたくないのか、驚いてギターを隠した。

「別にいいじゃん、景色見たかっただけだし」

と冷たい言い方をしてしまったけれど、水谷くんのギャップに惹かれて

「それより水谷くんってギター弾けるの?」

と食い気味に聞いてみる。


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