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あなたに感謝していたいの  作者: 遠藤 敦子
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 大好きだったお父さんは私が中学2年生の頃に病死した。それからはアジア系外国人のお母さんと2人暮らしになったけれど、精神的におかしくなったのかお母さんは占いやスピリチュアルやマルチ商法にのめり込むようになった。--壺なんて買っても何かが変わるわけじゃないし、マルチ商法を広めてしまうと周りから人が離れていくよ。私は何度も忠告したけれど、ここまで来るともう私の言葉は届かなくなったようだ。もう何を言っても無駄だと思い、私は諦めていた。

 お母さんはマルチ商法のコミュニティで知り合った10歳下の白人男性に入れ込むようになる。彼氏ができたと浮かれて上機嫌なので、私はお父さんが亡くなる前のいつものお母さんに戻ったような気がして嬉しかった。しかしその彼氏とうまくいかないと、八つ当たりされることも増える。八つ当たりされた後は

歌乃(うたの)ごめんね。彼氏とうまくいかなくてイライラして……」

と謝罪され、いつものお母さんに戻っていた。この繰り返しだ。


 そんな時、その彼氏が妻子持ちの既婚者であることが発覚する。奥様から連絡が来たことがきっかけだった。お母さんがその彼氏にお金を貸したり、プレゼントを貢いだりし、デート代も出してあげていたそう。それは彼氏じゃないよ。騙されてるだけだよ。何度もそう言いかけたけれど、のぼせ上がっているので言っても聞かないだろうと諦めていたのだ。

 学校から帰ると、お母さんは泣きながらうつ伏せになっていた。大量の薬やお酒の瓶の亡骸も転がっている。

「お母さん、泣いてるの?」

私が声をかけると、

「お父さん亡くなってからいいことなんて何にもない。あんたはいるだけでお金かかるし、彼氏には騙されてお金もとられたし。あんたなんていてもいなくてもなーんにも変わらない」

と返ってきた。私は心が壊れてしまい、自室に引きこもる。もうお母さんと顔を合わせるのも嫌だった。それでも学校に行くとお母さんと離れられるので、安心できたのだ。

 私が学校に行っている間、お母さんが彼氏をホテルで刺殺して逮捕された。それで学校を出るなり、警察官に

古澤歌乃(ふるさわうたの)さんですか?」

と声をかけられる。

「はい、そうです」

私が言うと、警察官は言いにくそうに

「実はお母様がホテルで男性を刺殺して逮捕されまして……。それでお母様に何か変わったことはなかったかお伺いしたくて」

と言う。それから警察署で事情聴取を受け、いろいろなことを聞かれた。今までのことがフラッシュバックして、吐き気もしていたくらいだ。

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