ひとまず事件のあらましのおさらい
「…というわけで剣山の投げ合いはしておりません。」
華道部の部長が現れて、花壇を荒らし気持ち悪い手紙を下駄箱に入れた犯人を探すことを依頼されたあたりまで説明をすると、
「なんだ〜どんなふうに投げ合いしたのか興味あったのに。ちょっと残念。」
戸村先輩が残念がった。平原先輩の彼女は投げるポーズと肩の具合の確認に入りはじめ、
隣りの平原先輩に手をそっと握られ、
「手を痛めちゃうかもしれないから、面白そう!剣山投げてみよう!とか思わないこと。」
と制されていた。
「先輩達、剣山って結構重いし、物騒ですし扱い方間違えたら大ケガしますからね。あの果たし状も剣山で刺してあったんですが、見て下さい。あの無数の穴を。」
とりあえず「これから科学部で剣山投げ合いを実証してみよう!」を阻止しておかないと。
事件の方を話して注意を逸らすことにした。
「さらに華道部の部長は学校の自転車置き場で自転車の前カゴから6/25(土)にレインコートを。7/2(土)にはサドルを抜かれて盗まれていました。花壇が荒らされたのは7/10(日)。手紙が入っていたのは7/12(火)。手紙の内容的にストーカーの匂いがしたし、彼女の自転車がどれか下駄箱はどこか犯人にバレていると考えました。なので彼女には自転車通学を控えてもらって、下駄箱を別の場所に換えて1人で行動しないようにしてもらっていたんです。」
一息ついて紅茶をいただいた。
「特に土日を警戒しましたが、何事もなく、もうすぐ夏休みで。対策と相談を科学部で一緒に練った7/20(水)の帰り道。黒いレインコートを着た刃物を持った男に彼女が切られそうになって、一緒に歩いていた私が彼女をなんとか避けさせ、後からきた幸太朗達が捕まえた。それが事件のあらましです。」
「それが、新聞記事に『A1高校に通う女子高生、近くに住む刃物を持った無職男性に狙われる。幸いかすり傷で大事には至らなかった。犯人はすぐに捕まったが云々』て感じでやんわり書かれてた事件だな。」
大した被害では無かったとされあまり大きな記事にならなかったのだ。
「でも、如月さんの事だから、警察や学校の発表以上に、犯人はどんな奴で、動機は何かとか全部、見当はついてるんだろ?」
平原先輩、涼しい顔してますけど、圧だけは相変わらずありますね…。




