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如月明、佐田幸太朗 小学三年生時を語る。

「お前達も薄々気づいているとは思うが幸太朗は不思議ちゃんだ。」


と切り出した。語るは小学三年生の頃の私と幸太朗の話だ。


「今は大分、黙っているが、小学校低学年の頃は、霊が視えるとか色んなものと話したとか口にしていてな。それは次第に嘘つきだと言われイジメの対象になったんだ。」


ありがちな話だ。想像がつくのだろう。間中と細田は黙って頷いた。


「幸太朗のお母さんに親戚筋で霊感が強くて説明がつかない出来事の相談にのっている人がいるという話を私は聞いたことがあったのでな、嘘をついているとは思っていないのだ。」


幸太朗は亀と鹿の間で相変わらず体育座りをして顔が見えない。


「小学校三年生の冬だったな。あの日は雨が降ったり止んだり。傘を差しても差さなくてもという天気で、やんちゃな小学生はすぐに傘を振り回して遊び出していた。下校班に分かれて校庭を歩いていたら、後ろの方で騒ぎがあって、見ると転んだのか座り込んでいる幸太朗をやんちゃな奴が傘で叩いていたんだ。」


寒い中、傘で滅多打ちしていた。悲鳴をあげる女子もいれば先生を呼びに走る者もいた。もっとやれと囃す声もあった。


「私はその頃から気が強くてな、『やめなさいよ』とか止めに入るタイプだったんだ。」


我ながら悲鳴をあげる女子でいられないあたりが可愛いげがないのだなと反省をすることもある。


「それが、かえって煽ってしまう事がある。全くそのパターンでな。全然やめないんだ。手でその傘を追い払って幸太朗を庇おうとしたら、安物の傘だったんだな。脆くて、傘の骨が折れて私のここに突き刺さったんだ。」


 私は長いストレートヘアで普段隠している右耳の近くを髪をあげて見せた。まだ傷跡は消えなくて残ってしまっている。間中も細田もヒェッと声をあげ幸太朗は膝に顔を埋めていた。


「血がよく流れてな。また雨が降り出すし、現場は阿鼻叫喚だ。救急車はくるし、大騒ぎだ。」


今回の事件現場も雨と大騒ぎだった。


「傷は縫うほど広くはなかったんだが、まあまあの深さでこの通り残ってしまった。不思議だよな。幸太朗とご両親が謝りに来たんだ。悪くないのに。叩いてきた傘の持ち主はケロッとしていて、かえって傘が壊れた事を文句言うぐらいだ。親御さんも子どものした事だからって音沙汰なしだ。」


「そして幸太朗は学校に来れなくなったんだ。」


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