蟹江先輩
蟹江先輩は戸村先輩を伸ばしてメガネをかけた様な人だった。現在の吹奏楽部には男子部員はいないが、蟹江先輩の代は2名いたと聞いている。
かき氷を食べ、片付けが終わると下校するなり、実験を続けるなり、部員達が散り始めた。
「さっ、関係者は理科室2へいくよ。」
との戸村先輩の号令に私と幸太朗、間中、蟹江先輩が続いた。細田はかき氷の存在を知らず今頃バスケ部で汗をかいているであろう。青春だ。
「で、どういうことになってんの?」
戸村先輩は当たり前のように理科室2の内鍵を締め普段は幸太朗が使っているパソコンの前の椅子に座りながら聞いてきた。そこは戸村先輩の定位置だった。そうなると、つい私は1年の時座ってたプリンター前に座ってしまう。幸太朗は鹿と亀の剥製の間に入り込み、蟹江先輩は平原先輩の席であった私が最近座っている戸村先輩の隣にどかっと落ち着いた。間中は席取りゲームに負けたようにウロウロした後、実験机の下に入っている椅子を引っ張って蟹江先輩の隣りに座った。
「先輩、守秘義務ってのがあってですね、あまり口外するわけには、」
どう話したら良いか分からず言葉を濁すと、蟹江先輩が、
「音楽室が荒されて、吹部に恨みを持つものの犯行だってもう卒業生達の間に広まってんだ。このままだと他校まで巻き込むぜ。マミュマミュ様はそもそもパーカスで祀ってたんだ。パーカスへの嫌がらせだ!大体、なんで科学部が動いてんのさ。俺が知ってることなら何でも教えてやるから、さっさと吐きやがれ。」
と隣りの間中の胸ぐらを掴みながら脅してきた。さっさと吐くのは私だと思います。蟹江先輩。




