玉澤 詩帆
「詩帆ちゃん、可愛い名前ですね。」
後輩になった途端になんだその口調は。変態オヤジに分類されないように気をつけろと細田に言いたくなった。
「ありがとうございます。細田先輩、本当、カッコいいですね。2年の先輩が握手してくれたって言ってました。私も良いですか?」
どうやら自分の可愛いさを自負したタイプのようだ。
「やーイケメンって手までイケメン」
言われ慣れてるのか、カッコいい、イケメンの連発に笑みを返しながら五分を意識した細田の質問が始まった。
「事件の日、昨日は何時に登校しましたか?」
「7時40分頃です。もう、騒ぎになってました。私達フルートはなんにも無くて良かったです。でも、副部長に最後に鍵閉めたの私でしょって責められて。何も気づかなかったのとか、フルートは悪くないって速く証明しなさいとか言われました。」
「事件前に鍵を閉めたのは2年生だと伺いましたが?」
長い横の髪をくるくると指に絡めながら玉澤は
「その日の鍵当番は1年のリーダーの私だったんです。でも、下校ってなった時、チューバの秋葉先輩がピストンが開かないって騒ぎ出して。開けるのにはビニール手袋が必要らしいんですけど、見つからなくて。どうしようかなって思ってたら二年の先輩が閉めるから帰っていいよって言ってくれたのでお願いしちゃいました。」
と語った。細田が、
「詩帆ちゃんが帰るとき残っていたのは誰だか分かりますか?」
聞くと
「2年の先輩達何人かと金管の一年だったと思います。」
「何か、吹奏楽部が恨みをかうような事知ってますか?」
細田の最後の質問には躊躇いがちに
「辞めた先輩達じゃないかって一年では噂してるんです。コンクールが近いのにこんなロスな事。腹いせに嫌がらせをしたんじゃ無いかって。でも、私が言ったって内緒にして下さいね。」
と答えた。




