ここはA1高校理科室2数学班
「ここでものを食べるなと何度注意すればやめるのだ?!」
私は、女子だが、声を荒げざるをえない時もある。
ここA1高校理科室2は元、地学室だが、この高校から地学が消えたことによりすっかり理科倉庫と化してしまった。そこに科学部の数学的要素の先輩たちがひっそりとパソコンコーナーを作り、倉庫兼科学部数学班活動場所兼部室とされるようになっていた。
3年と1年に数学班はいないため、2年の私、如月明と今、クランキーチョコを食べている佐田幸太朗の2人が今の科学部数学班だ。
時折他の科学部のデータ入力や打ち出し、下手したら他の部活や先生たちからパソコン系の厄介事を引き受けている。まあ、そのために良いパソコン機器を揃えられているので仕方ないのだけど。
天球儀、地質模型、岩石標本、地形図、自動温度計などの地学教材の他、何故かのワシや亀、狸、鹿の首の剥製、壊れたDNA模型、ガラス細工用バーナーとか鞴とか色のあせたホルマリン漬け達などなにやらカオスな一角もありパソコンとそれらを守るためにここは食事は禁止である。
「一口で食べるから大丈夫。汚れない。お腹空くと頭動かない。チョコないとパソコン打てない。」
もぐもぐと口を動かしながら反論するこの男佐田幸太朗は同い年とは思えないほど横縦デカい。そしてよく食べる。そして期待を裏切りデブではない。横は肩幅と骨格でデカいだけで、科学部と剣道部を兼部している。通学のチャリと剣道の素振りでご飯分はエネルギーが無くなり、頭を使う分はチョコで補っているというわけ分からない解説を何度された事であろう。だが、食べるのは禁止だ。
「今、お前は何を打っているのだ?」
チョコ袋を無理矢理洗濯バサミ(このために常備されている)で閉じて奴のリュックに詰め込みながら聞く私を恨めしそうにみながら
「柔道部の部費管理帳と県大会出場オメのホームページ記事。」
と今やっていることを報告してきた。
「ほう、柔道部から頼まれたのか。」
「剣道部、同居してるから武道場。立派なのは強豪柔道部サマサマのおかげ。見て!このホームページ!」
嬉々として奴が見せるページが戴けない。
「幸太朗、これは却下だ。なんだい、このいかにもな所々赤い道着は?時折点滅して現れる髪に顔全面覆われた女子高生はなんだ!しかも芸が細かくうちの高校の制服をきて身体が透けてるじゃないか!どこからこんな素材を!バックのミュージックまでホラーじゃないか!直せ!うちの高校に入学生がいなくなるぞ。」
「えーダメ?力作ー。ホラーじゃないとやる気うせる。帰る。如月、なら残りお願い。せっかく剣道部の休みを費やしたのにチェック厳しい。うるさい。」
「いや、待て、直せ。ほら、健全に、県大会出場!普通に打て。」
世話の焼ける。パソコンの腕は確かなのだが、ホラー好きでスマホの写真フォルダは目を覆いたくなるほどの画像の趣味で溢れてる。そんなに内臓とか赤い液体が好きなら生物班に入ってカエルやネズミと戯れば良かったものを理科室3(生物室)は小動物の霊が沢山いて相手が大変だとかフザけた事をぬかして数学班に落ち着いてしまった変な奴である。
そんな幸太朗に嫌疑がかかってしまったのが始まりであった。