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ここは五話。夜の出会い。

 静かに、けれどしっかり目を覚ますような時計のアラームが鳴る。無事に目覚めることができて、設定した鳥のさえずりはしっかり役目を果たした。

 アイラは手のひらサイズの時計に触れてアラームを止めると起き上がり、支度を始めよう。


「うくぅー……っはぁ。じゃあ。行きますか」


 顔を洗い、鏡を見ると着たまま寝た服の皺はあったので伸ばして、少ない荷物を背負ったらアイラの支度は終わりだ。どうやら汗もかかないし、とそのまま扉へと足を向ける。

 一階では夜に活動する種族らしい人が食堂で屯していた。中には普通の種族らしい人もいたが、昼に比べると少数派である。アイラはソレアを探してきょろきょろと辺りを見渡すも、夜は休みの様でおばちゃんも夜間交代したのか厨房にも見えなかった。

 この時間に仕事をする人はとても熱心で、掲示板や机、或いは立ちながら作戦を必死に練っているようだ。夜間と昼どちらも警護依頼や魔獣は多いが、破壊に偏った魔獣が湧きやすいらしいので熱心に警戒しているのだろう。


 協会の中には掲示板がありこの街周辺で魔獣の出る場所を表示できる電子板が備え付けられていた。そこにはここ周辺の地図もあり、アイラが北の森から来たことが把握できる。

 ついでに危険なので許可制! とも書かれていて少し戸惑ってしまう。他に危険な場所のついでなのか、なんなのかわからないが許可が必要なのだろう。


 地図と睨めっこするとどうやら南の草原の方にいくつか夜なのに珍しく創造の魔力が滞留しているようだ。

 魔獣は偏った魔力が凝り固まり顕現するので、魔獣が居ると危害が出るだけでなく魔力が循環しないという問題がある。倒せば自然と巡り始めるらしい。


 今回は至人板の動きを確認するために普通に散らすことにし、アイラは小さく拳を握った。

 作戦会議や雑談をしている人を邪魔しないように外に出れば街灯に照らされた街並みが出てくる。

 月明かりと街灯、人の放つ光。そしてそれらに負けない星明りで世界は照らされ夜なのに街は昼間のようだ。

 街の中には夜に動き始めるヒト、夜働く人などで昼間とそん色のない賑わいようで屋台や店も普通にやっていて、機械の体らしき人物など昼間に居た所から動いていないのが丸わかりだったりする。


 買わないようにそそくさと賑わう夜市を通って南門方向へ行くのだが、つい夜市を見物しながら通ってしまう。やがて夜市の出入り口までくれば、アイラの両手にはホットミルク、セナモン(ほぼシナモン)入りホットトーヘ(暖かい混ぜ物の意)ヘの二つがあった。

 小さな灰霧で二つが入るコップを生成し混ぜ、ちびちび飲む予定だ。もちろん蓋をして持ち歩く予定である。


 夜市で知れたのだが実は灰霧で生成したは実在時間が存在しているらしい。それなりの灰霧を詰めないと実在し続けるのは難しいのがもどかしいが、困ることもそうは無いのでアイラは思考を放棄していた。むしろ実在しすぎると困る。

 大量の灰霧を使えば時計のように存在を作り出すこともできるが、一般的に魔力が多いところでかき集めて一日以上固定できるのはコップ一個程度だ。

 時計の場合はアイラが動物にもらったり、道中魔力を回収してたりで比率のいい魔力がまだ残っていた、という理由が挙げられる……それだけにしては出来がいいが、まぁ悪いことではない。

 箸を作ってみようとして一瞬で消えたのは悲しかった。使い捨て箸貰えたので何とかなったが気を付けないといけない。


 歩いているとたまに旅の装いをしている人から手を振られ、よくわからないまま会釈して通り過ぎていく。どこか気安さを知る世界だが別に他を知っているわけではない。これが普通なのだろう。

 街を観察し、いくつか歩道橋を渡った先に外は見えてきた。

 目の前には月と星に照らされた草原、後ろには様々な理由で作られた光が照らす一個の街。闇と光の境目が強烈でアイラは眩暈を起こしそうだった。


 暗闇に慣れ、街道を少し歩いてから街道の外に行く。

 外に出て少し歩くと、そういえば地図を買ってない、という事実に気が付いた。というか地図は売ってたんだろうか。


 地図、講習で習うにはそれはこの世界ではもうほとんど廃れているのだとか。本屋に行けば売っているだろうが、現在進行形で変化していくこの世界を表すには紙というものはあまりにもひ弱だ。

 一応この世界独自の方法があるらしいのだが、名前と手段を覚えてない。


 幸いなのは、街が灯りで分かりやすいことだろうか。顔を上げれば街の位置は簡単に掴めるだろう。


 どっしり構えている草をかき分けて進めはそろそろ予定地に着く。草が魔獣によってなぎ倒され少し開けている。そこで魔獣を狩りつつ魔力を吸収すれば、灰霧と討伐数がそれぞれ稼げるのを確認できた。なのであとは黙々と魔獣を狩るだけだ。

 瘴気が湧くほどの魔獣は中型下位以上の魔獣に限るので急激な回復になることはないが、それでもちまちまとお金稼ぎと同時に活動できるのは最適だった。

 すらすらと魔獣を狩っていき、やがて飲み物も終わり徐々に狩る速度も上がっていく。それほど戦闘の知恵や経験すらもないが、御しやすい魔獣は楽だった。確か小型魔獣一匹で千コクハ、だったかな。あの貨幣がいくらなのかは眠くて覚えていないが。


「ふーん。ふふんふふふふーん」


 今、アイラの機嫌は最高潮だ。情報も講習という形で更に入手できたし、ご飯や飲み物はおいしい。カフィリカ――ミルクとトーヘを香料と共に混ぜたもの――のブレンドが最高だったのも拍車に掛けた。

 ついでに天気も良く、風もカラッとしていて夜としてはアイラの一番好きな気温だ。何もかも順調で楽しく過ごせている。


 空気を震わすような音や何かと切り結ぶ音を聞いてふと時計を確認した。

 時間は二十二時だ。夜に活動する者たちは月が登れば上るほどその力を発揮できる場合が殆どである。そういう者たちの戦闘音だろう。


 時折何か油で熱しているような音が聞こえたりしてるが気にせず狩りを続けた。


(スパン。ズバンヌ。ズンバラリン。何がいいかな)


 アイラは相変わらず消費が軽く身の丈に合うと感じるナイフで狩りながら、効果音を作り出そうとしていた。小型の魔獣は外見の異常度合いも低く、耳が翅になったウサギくらいの変化の上戦闘力もそんなに高くない。

 故に思考にも余裕があった。


(でも、一人で中型魔獣以降は下準備が必要だろうなぁ……というか魔獣は食べられないのかな? 魔獣ってたまにおいしそうだしね。講習では魔獣を倒すと極稀に何かが形になる場合がある、だっけ。専門的なのは図書館、ね)


 色々雑に思考している中フェライパン――主に焼き調理に使う片手鍋――がアイラの顔目掛けすっ飛んできた。

 アイラは予想外の襲撃に思わずフェライパンの取っ手を手に取ってしまい、ほのかに温かいことと襲撃で思考が停止する。

 手で持ってると一方のところに飛びたそうに震えたので手を放す。するとフェライパンはひとりでに飛び、持ち主のところだろう場所へと帰っていった。


 何だったのだろうと首を傾げていると、卵が爆発したかのような爆発音がした後におよそ平均で小さいであろうアイラより少し小さく、水色のエプロンを着た女の子が走ってくる。ただし、後ろに騒がしく唸り声をあげると多種多様な魔獣を連れて。その様子は小型魔獣の見本市のようである。


「ごめんなさーい! 逃げて逃げてー!」


「え、いやちょっと困るんだけど!」


(ええい。あの数は色々迷惑が掛かる! めんどくさいので魔法を使おう!)


 後ろを見て、そう決めたらアイラの行動は早い。右手を空に掲げ、灰霧を集めだした。回収していた魔力が役に立って、それは直ぐに発動する。


「私の後ろにいてて! 空は黒点のある星々なり! 切り裂くは大量の軍、灰刃!」


 ふええ、と謎の少女の鳴き声が聞こえた気はするが気にせず魔獣を広範囲に倒そうとする。


(まずい。全部を倒すには灰霧が足りない!)


 数が多く、この場の乱れはすでに整ってしまっているのでナイフで戦うしかなくなってしまう。

 後ろを見ても腰の抜けた少女しかおらず、その視線はアイラに怯えているのか魔獣の大群に怯えているのかわからないほど憔悴していた。

 すると先ほどのフェライパンが空に浮いて勢いを付けて少女の頭を叩く。とても痛そうな音にアイラは顔を顰める。

 しかし、それで目が覚めたのか少女は立ちあがり叫んだ。


「いったぁい! 何するの、ミェナ! ってそれどころじゃない。手助けします!」


 ミェナと呼ばれたフェライパンは自我があるような動きをしている。ミェナは再び少女の手に収まり、少女はアイラの前に飛び出してきたので、慌ててアイラは灰霧を止めた。


 ミェナで魔獣を叩くと一時的に動きが止まるようで、その隙をアイラはナイフですんなり狩り取っていった。

 時折キラキラした目でこちらを見てくる少女にアイラは辟易したが、極力見ないようにして狩りを進める。


 フェライパンの大きな音と、アイラの出す静かな斬撃は見事に組み合わさり調子よく数を減らしていくのをみてアイラは少し安堵し深い息を吐く。

 しかし一緒に戦っている謎の少女は何もわかってなさそうな顔だ。本当に見えてるんだろうかとも思ったが考えないようにして、最後の一体を討伐し終えおもわず立ち尽くしてしまう。

 精神的に疲れてしまった。なんかお腹空かないハズなのにお腹空いた気がするのは気のせいだろうか。


「ありがとうございました! そしてごめんなさいでした!」


「ああ、うん。まぁ仕方ないかな。たまにああやって大量に生まれるらしいし」


 草臥れながらもアイラは手を振り答える。それに対し少女はこんな後でも元気の様だ。


「そうなんですね、よく知らないですけど過酷な世界ですね! 神様に言われてきたけどどうすればいいんでしょう?」


 その発言で理解したが、どうやら少女は今さっき降り立ったミャルナントの様だ。

 話を聞けばこの世界の料理を味わいたいから、と授けられていた眷属のフェライパンに祭壇機能を付けてこの世界に送られたらしい。

 一応この世界の四則演算と言語力だけは授けられたらしいので講習は時間かからないだろう、と討伐者協会の情報を教えた。


「討伐者協会ですね! ありがとうございます。 私、ムエナと言います! こっちはこの世界で言えば、フェライパンのミェナです!」


 飛んでるフェライパンの柄とムエナの腰が曲がって挨拶する。勢いがすごい。


「あ、うん。大丈夫。私はアイラ。講習だったら私の受けた昼間の人がわかりやすいから、とりあえず昼まで寝てればいいよ。……お金渡されてるよね?」


「あー……お金、ですね。無いです」


 すごく項垂れてるが、お金貸すほどではない……。アイラもお金がまだ何に必要か分かってないから浪費はしたくない。


 むむむ、と悩んでアイラは一つの案を思いつく。その案を恐る恐る口に出すと、ムエナは飛び上がるように喜びを表現した。


「いいんですか!? もし可能ならお願いしたいです!」


「いいよ。でもまぁ、後日そのフェライパンで料理を作ってくれると嬉しいかな」


「もちろんです! わー何作ろうかな! 明日昼市回りましょうよ! ね!」

ありがとうございました。

下の星、欲しいな。あとブックマークと、感想も欲しいな。


アイラの一言。

「ムエナからいい匂いする」


 こんにちは。こんばんはかな。

 とりあえず少しづつマシになって来たとは思います。けど、時間の演出がまだ下手かなと思いますね。

 私の記憶の残り方と同じような時間の過ぎ方をしていて歪に感じます。もうちょっと時間を演出するには会話が必要かな……多すぎてもなぁ、ってとこです。意見お待ちしております。

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